スマホやパソコンがあれば、いつでも、誰でもオンライン上でお店が持てる。その手軽さはわかっていても、いざ「自分のお店が持ちたい」と思った場合、足踏みしてしまう人も多いだろう。

ネットショップといえど、サーバーやサイトデザイン、決済システムの導入など、店舗開設にはそれなりの手間がかかる。さらに1番重要な「商品づくり」をするにも、様々な工程を挟まなくてはならず、自分1人で全てをやるのは骨が折れるからだ。

2018年9月26日、そんな悩みを抱える人のためのセミナー『これからの衣服生産とECのプラットフォーム』が開催された。ネットショップ作成サービス「BASE」と「sitateru」のタイアップイベントとなる本セミナーに登壇したのは、宮本 順一氏( BASE株式会社 BASE Business Division プランナー)、 告鍬 陽介氏(catejina オーナー)、冨山 雄輔(シタテル株式会社 生産管理担当)。

世界にたった1つの「自分のお店」が、長く愛されるためには、どうするべきか。ネットショッププラットフォーマー、ブランドオーナー、衣服生産プラットフォーマーそれぞれの観点から、紐解いていく。

経済のために人生を犠牲にしない。新しい生き方を示唆するネットショッププラットフォーム

自分が好きなモノをつくって、売る。自分が楽しいことを優先し、経済のために人生を犠牲にしないーー。

誰でも簡単にネットショップが開設できる「BASE」は、人びとの「新しい生き方」を支援するプラットフォームだ。本サービスからは、これまでに60万店舗以上のネットショップが誕生した。宮本氏は、BASEのショップオーナーの多様さを示し、同サービスの使いやすさを来場者に説明した。

「下は10歳、上は70歳のおばあちゃんまで、BASEで出店しています。たった30秒で登録ができるので、専門知識不要で手軽に自分だけのお店を持つことできるのです」(宮本氏)

「BASE」を利用すれば、誰でも気軽に商売ができる。しかしショップに並べる「商品」は、気軽につくれるものではない。特に衣服を販売する場合、1人で生産し続けるのは、容易なことではないからだ。工場に委託する場合も、個人の交渉には限界があり、ハンドメイドしようものならば、注文が増えるほどに疲弊することになってしまう。

そんな課題をsitateruで解消し、BASEでオリジナルブランドを展開しているのが「catejina」だ。ショップオーナーの告鍬氏は、文化服装学院を卒業後、染色工場へ入社。インクジェットプリントの技術を学び、友人とのブランド立ち上げを経て、2012年より自身のアパレルブランドcatejinaを立ち上げた。

catejinaの特徴は、個性的なテキスタイル。プリント、染め、刺繍、織り、パッチワークなどのテクニックを使って生み出された、オリジナルのテキスタイルで衣服生産を行っている。

「テキスタイル製作は僕が行なって、パターン製作はsitateruにお願いしています。作りたい服のイメージを共有して、身幅や袖丈など細かい採寸の調整を行うだけで、パターンに起こしてもらえるので非常に助かっています」(告鍬氏)

catejinaは、1点物も展開している。一般的に、衣服を工場で製作する場合にはある程度の数量がなければ、発注することができない。しかし告鍬氏は、これらの生産もsitateruを利用して行っているのだという。

「古着のサッカーユニフォームを使ったアロハシャツを生産したのですが、これはすべて1点物です。同じパターンで、一つひとつ違う生地を使って作ってもらっているんですよね。一般的に、リメイクアイテムはハンドメイドが多いですが、縫製工場に生産を依頼することによって、本格的な衣服が生産できています」(告鍬氏)

共感の時代。自分のスタイルを貫き通せば、ファンが呼応する

続いて、宮本氏、告鍬氏、冨山によるトークセッションが行われた。会場に集まった“未来のブランドオーナー”を前に、彼らが抱くであろう様々な疑問をテーマに、意見が交わされた。

catejinaのように、自身の頭にあるイメージを形にしたいと思う人は多いだろう。しかし、ものづくりーー特に衣服生産においては、専門知識が必要となる。事実、告鍬氏は文化服装学院出身で、「服づくり」に関する知識を持っていた。専門知識がなければ、「自分のブランド」を持つことは難しいのだろうか。そんな疑問を投げかけられた冨山からは、意外な答えが返ってきた。

sitateruでは、言葉どおり誰でも衣服生産を行うことができます。つくりたい服に近いイ メージの画像を添付して、サイズや素材を選択するだけで、服づくりがはじめられるんです。私は長年アパレルの生産管理の現場にいますが、服づくりに関する知識がない人が企画した服の方が売れることが多々あります。専門知識を持っていると、技術的な限界を考えてしまって、クリエイションの幅が狭くなるんですよね」(冨山)

オンライン上には、「無限の陳列スペース」が存在している。有名メーカーの商品も、個人の作り手によるニッチな商品も、様々な商品が無数に並んでいるのだ。その中から、消費者に“選んで”もらうためには、SNSの運用は欠かせない。告鍬氏は、「catejina」公式Instagramの運用について、以下のように明かす。

「『catejina』のInstagramは、フォロワーが約300人しかいないのですが、エンゲージメントが非常に高いんです。新作を待ちわびるコメントも多くいただきますし、イベント出店のたびに反響もあって、顧客さんと定常的につながることができています」(告鍬氏)

BASEはショップオーナーに、Instagramの投稿画像から商品購入ページへ誘導できる機能「Instagram販売App」も提供しており、売上が高いショップはInstagramのフォロワー数も多いのだと、宮本氏は言う。

「彼らは、狙ってフォロワーを増やしているわけではないんですよね。ただ地道に自分たちの世界観を発信して、ファンを集めているんです」(宮本氏)

告鍬氏の友人であり、アパレルブランド「ガールズ ドント クライ(GIRLS DON’T CRY)」を手がけるVERDYも自分の信念を貫き続けた結果、「ストリートシーンのキーパーソン」として注目を浴びているのだとか。

VERDY君とは前から友達なのですが、彼のやっていることは昔となんら変わりません。彼はひたすら同じカルチャーを貫いて、ブレていない。彼自身、何も新しいことをしていないのに突然注目が集まるようになったことに、心底驚いているんです」(告鍬氏)

イベントの最後、宮本氏は「ブランドとは、オーナーの品格を表したものです」と話し、プライドを持って信念を貫くことの大切さを説いた。

マスメディアが崩壊した今、トレンドという概念は消えつつある。各々が自分のスタイルを追求し、発信を続けているからだ。だからこそ、人は自分と同じスタイルを持ったブランドに強く共感する。逆に「大衆」という幻に迎合したブランドは淘汰されていくだろう。世界は広い。自分のスタイルを貫き通せば、必ず誰かが共感してくれる。ものづくりの場が解放された今、ブレずに自分の信じる世界を追求することが、大切なのではないだろうか。

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