ーーはじめに、みなさまから自社のサービスやブランドのご説明をお願いします。

川崎:ぼくはSynfluxのプロジェクトリード兼ファッションデザイナーとしてマスカスタマイゼーションとファッションに関するサービスを開発しています。ぼくたちが試作している「アルゴリズミック・クチュール」というサービスの特徴は次の3つから説明できます。第一にはAI(機械学習)によってゴミゼロの型紙(パターン)を自動的に生成するアルゴリズム。次にユーザが服のデザインをカスタマイズできるwebプラットフォーム、そしてデジタルなプロセスによって作られた洋服です。

 ぼくたちは、ファッションデザイナー、エンジニア、プログラマーからなる領域横断的なチームなので、アルゴリズムから服が作られるまでのプロセス全体を外注に頼ることなく内製的にプロトタイピングできます。AIとサステナビリティの融合によって、オートクチュールとプレタポルテを更新する新しいファッションシステムを実装することを目指しています。

 今年4月には、H&Mファウンデーションが主催するGlobal Change Awardでアーリー・バード特別賞を受賞しました。今後は、ファッションブランドや素材や機材のメーカーのみなさんとコラボレーションしつつ面白いプロダクトやサービスを作っていきたいと思っています。

 先に持続可能なファッションの未来ということについてお話させていただきますと、ぼくは次の3つの点を複合的に考えてファッションのシステムを再設計することが重要なのではないかと思っています。①デザインの過程で排出されるゴミと無駄をゼロにするための製造過程のリデザイン、②機械学習や3Dデザインツールなどを応用したデザイナーがデータの協働作業するためのデザインプロセスのリデザイン、③受注生産やサブスクリプション、カスタマイゼーションなども含めた着る人のテイストにフィットしたサービスのリデザインです。

長見:「HATRA」はもともとスウェットパーカーから立ち上がり、街の中にいてもポータブルに安心感を持ち運べるという思いからブランドを始めました。現在は、他分野との接点が多くゆるやかな連携によって、より広範で立体的なブランドのあり方を実践しているという特性があります。
本日のテーマがサステナブルということで、ファッションが社会にとってどのような役割を果たしているのかをデザイナー目線でお話したいと思います。

横澤:2つのラインを保有するオリジナルブランド「KOTOHA YOKOZAWA」を運営しています。1つ目はカットソーをメインにした「todo」で、縫い目が曲線で構成され、飾りが全て違う1点もののアイテムを提供しています。企業に就職した時に全て裏付けがないと新しい服が作れないという現実に愕然とし、感覚を大切にした服つくりをしたいという思いと、大手には価格では勝てないので自分にしかできないデザインと価値があるものを提供しようと思い、このラインを立ち上げました。

 2つ目は今回のテーマにも通ずると思うのですが、再利用品のみで作っている「some body」です。サンプルや廃棄になった服にデザインという付加価値を加えて販売しています。
ブランドは毎シーズンコレクションに行ってインスピレーションを得ていると思いますが、実は生活の延長線上にデザインがあると思っています。それが服を作る際の発想に繋がっています。

ーーみなさま異なるアプローチでサステナブルを考えられていると感じました。クリエイティブを考える上で、改めてサステナビリティの定義についての考えを教えて下さい。

川崎:国連や外務省の定義を見てみると、“環境の維持可能性を探求すること”に加えて“経済の維持可能性”を前提にしている点は重要だなと思っています。しかし他方でファッションは文化なので、“文化の視点”が何よりも重要です。ファッション産業が、大量生産大量消費に舵を切ってしまった歴史への反省のもとに、サステナビリティという概念が広まっているとするならば、環境経済のみならずファッションの文化を維持するために行うべきアプローチとして、存在感を増しているのではないかという認識です。

長見:端的に言うとトレンドワードだなという感覚はすごくあります。言葉や言い方を変えてずっと残っていくもので、それが社会を動かすエンジンになって良い方向に向かうとは思いますが、最終的には態度がコンテンツ化すると思っています。商品発送の仕方やインスタグラムでのコミュニケーション自体が商品となり、お客様との接点のメインコンテンツがサステナビリティの上位にあるべき世界観であると思います。

ーー何かものを作るのではなく、態度全体で表すということですね。横澤さんはいかがでしょうか?

横澤:ブランドでサステナビリティを積極的にやっているかと言われるとそうではないですし、ブランドを作り出していることに対して罪悪感もあります。服はすでに世の中にたくさんあるので、一から作る必要はないと思っています。生地から作ることと既存の服から作ることの、グラデーションがどんどんなくなっていくのではないかと思っています。時間軸を取り除いて、最先端なものとビンテージを当たり前にミックスさせている人がいいなという思いがあります。

ーー日本人は新品が好きな文化ですが、ヨーロッパなどではビンテージの服を着るのが格好いいとされる文化もあり、大きな違いがあると感じます。もっと分解して色んな年代の服や古着を身に付けることも文化にするという提案が、ブランドのこれからの役目のようにも感じます。

長見:川崎さんへ質問したいのですが、川崎さんのサービスに類似するものが今後、高価なサービスとして出てくるのか安価なサービスで出てくるのか、あるいはどちらが望ましいと思っているのか教えて下さい。

川崎:ぼくたちの開発しているサービスは作り手と使い手のために寄与すべきものだと思っています。なので、価格も作り手と使い手のよりよい関係性に応じて適正になっていくことが望ましいと考えています。

長見:最初からすごく安いものだと情報の波及性は弱いかもしれないと思うのですが、どう思いますか?

川崎:確かに、衣服の需要は年々増加しているのにも関わらず、一着あたりの単価は減少するという「ファッションパラドックス」という問題を踏まえると、安価すぎるのは大問題ですね。1つにはデジタルカスタマイゼーションやサブスクリプションなど新しいサービスの形態がファッション産業において新しい価値として認められるかどうかというところが鍵になってくるかなと。

 それに、サステナビリティも新しい価値の一つですよね。サステナビリティはデザイナーやブランドの創造性を損ねるものではなく、むしろ拡張できるということが共有されれば「エコっぽい」といった特定のテイストから解放された多様なサステナブルアイテムが登場してくると思うので、その方向性を期待します。ぼくが目指すのは、ファッション産業を縮小してもいいからサステナビリティを実現するべき、というのではなく、ファッションをより面白くするためにサステナビリティやテクノロジーと共生するという未来です。

ーー横澤さんのインタビュー記事で「自分のブランドがメルカリなどで高く売れる物であって欲しい」という言葉を拝見したのですが、そういった考えに至った経緯を教えて下さい

横澤:自分で販売した服をお客様に着続けて欲しいという願いはブランド側の勝手な思いでしかなくて、時が経てば気持ちの変化があることは自然なことだと思っています。また、出品情報をみればブランドの二次流通の相場が分かるので、ブランドを見守りながらお客様のニーズやブランドの価値の変化を確認しています。服はお客様の資産だと思うので、軽い気持ちで買える値段ではないからこそ、買ってくれた方に対してそれ以上の価値を提供し続けたいと思っています。

ーー従来のアパレルやファッションに縛られず、世の中の価値観の変化をそのまま取り入れているように感じています。みなさんのように積極的に色んな方とコラボレーションをする取り組みが増えれば、業界全体の価値観も変わっていくと思いました。ありがとうございました。