ーーはじめに、おふたりから自社のサービスやブランドのご説明をお願いします。

清水:155センチ以下の低身長女性向けブランド『COHINA』を運営し、店舗は持たずにECサイトのみで販売をしております。低身長女性の悩みを解決するために、幅広いサイズ展開とシルエットに強いこだわりを持っています。通常のお店ではフリーやSMLサイズで販売されていますが、低身長女性は体にフィットする商品を見つけることが自体が難しく、自分で丈を調整する人が多いのですがウエスト位置や幅がアンバランスで綺麗に着ることができないという課題がありました。そこで、幅や丈を細かく調整したサイズを揃えることで、より個人にフィットした服をお届けしています。

一般的なECサイトは160cm以上のモデル着用写真を使用してることが多いため、小柄女性は平均身長の型に比べてEC購買体験に乏しいという仮説があります。そのため身長別の着用写真を使用することに加えて、ライブ配信を行い低身長モデルによるバーチャル接客と試着を提供しています。身長、体型、年齢が異なるモデルを用意しお客様の体型により近いモデルがその場で試着しています。ライブ配信で得たお客様の声を商品にも反映させています。柄や形をお客様と一緒に考えて決めています。

渡邉:10〜20代前半女性向けのライフスタイルメディア「RiLi.tokyo」を運営し、メディアと連動したオンラインストア「RiLi STORE」も展開しています。10~20代前半女性はSNSが情報源となっている世代のため、我々はリアルなトレンド情報をキュレーションして発信する次世代メディアを目指しており、公式インフルエンサー約800名と連携してクオリティの高いコンテンツを発信しています。

「RiLi STORE」はセレクトショップの形態で、一部オリジナルデザインも扱っています。2018年に、ルミネエスト新宿にてポップアップショップを開催し、ルミネエスト新宿アパレルポップアップショップ部門で歴代1位の売上を達成することができました。SNS世代がメインターゲットのため、インスタグラムには非常に注力しています。

ーーファンの意見を取り入れている点が、2つのブランドに共通する特徴だと思いました。自分たちのサービスやブランドがファンを熱狂させている一番の理由はズバリなんだと思いますか?

渡邉:インスタグラムのフォロワー数が多いので、インスタの発信方法やフォロワー数を増やす方法をよく聞かれますが、フォロワーを増やすことが目的というよりはターゲット層のトレンドを受信することにかなり重きを置いています。どんな商品だったらお客様を喜ばすことができるのかをインスタグラムから分析して次に流行りそうなものを考えながら打ち出しているので、お客様の共感を生んだ結果がフォロワー数に繋がっていると考えます。なので、かなりSNSを情報ソースとして活用しています。

その一方で、どうやってファンを熱狂させるかという話ですが、マーケットインだけをしてしまうと常に二番煎じのどこかで見たことがある商品ばかりになり、それではファンはつかないと思っています。常にトレンドを先駆ける存在でいるために、仮説と検証を繰り返しながら商品をアップデートし、世の中の一歩先の流行を意識した商品を作っています。ファンを熱狂させるためには、期待感を裏切らない先駆けたコンテンツ製作が大切だと思っています。

ーーファンのテイストを受信しつつ、噛み砕いて先駆けたものを発信するようなイメージですか?

渡邉:スタッフの声やユーザーとのディスカッションも混ぜ込んで新しいアイテムをつくっています。

ーーもう一つお聞きしたいのですが、具体的にどのように受信をしていますか?

渡邉:今年発売したオリジナル浴衣は、販売開始1時間で完売するほど大ヒットしたのですが、商品開発のきっかけはインスタグラムから拾い上げた、「RiLiファンの中でレトロな街並みを楽しむ機会が増えている」という情報でした。着物レンタルが流行り、かわいい着物が増える一方で、みんなが着たいと思える色味や柄は、浴衣にはないことに気付きました。そこで、ファンのインスタグラムのテイストに合わせた浴衣を提案したところ大ヒットに繋がりました。

ーーライフスタイルで流行っていることをファン好みのテイストで商品に反映させ、ニッチなリアル商品を提供したということですね。清水さんにもファンの熱狂を呼ぶ秘訣をお聞きしたいと思います。

清水:一言でいうと”共感”と”距離感”がブランドとしては大きかったと思っています。”共感”の部分でいうとお客様と作り手が低身長という共通項を持っているので、ファッションの悩みがコミュニケーションの入り口となり、こういった”共感”から商品を生み出しています。また、多様なサイズ展開はお客様の体によりフィットした商品を選んでいただき、ここなら自分が欲しいものを作ってくれるかもしれないという期待感を持っていただくためです。

”距離感”の部分でいうと、ライブ配信などでお客様とコミュニケーションを取る時は友人のような気持ちで接しています。また配信をしているメンバーもみんなの憧れの対象ではなく、お客様と同じ悩みを抱えている等身大の女性であることを大切にしているので、お客様が自分たちの輪の中に入ってきてくれているという感覚を持っています。

ーお客様との距離感がかなり近いわけですね。多様なサイズ展開という定量的な提案がとても分かりやすい反面、定性的な部分で気を付けていることはありますか?

清水:今までは、大人の女性がぴったりサイズで着たい綺麗めカジュアル服がなかなか手に入らなかったので、お客様が欲しいと思うテイストやデザインであり自身の体型にフィットする商品が手に入るブランドを目指しています。

ーーファンの方とのコミュニケーションの取り方で気を付けていることはありますか?

渡邉:”押し付けない”ことにすごく気を付けています。「これが可愛い、これはダサい」という言い方は絶対にせず、「みんなのために好きそうなものを探してきた、作ってみた」と常にポジティブな提案を心がけています。最近では、インスタグラムでダイエット部というものをスタートし、ダイエットという切り口でどうRiLiっぽさを出すかという試みをしています。そこでも、痩せないからダメではなく頑張るモチベーションをアップすることを目的に、実際にスタッフがダイエットに取り組みながら一緒に頑張ろうというスタンスで発信しています。ダイエットに関する知識も発信しつつ、モチベーションがあがるコンテンツも作っています。

ーーRiLiっぽさとありますが、「◯◯っぽさ」ってすごく曖昧で表現が難しいと感じますが、どのように定義されていますか?

渡邉:実は、RiLiっぽさの定義は社内にはなく、それを決めるのはお客様に委ねています。反応があればRiLiっぽさがあり、なければないと思っています。

ーーお客様の反応がRiLiっぽさに繋がっているということですね。清水さんがコミュニケーションにおいて気を付けていることを教えてください。

清水:絶対に一方的にならないように気を付けています。相互のコミュニケーションになることが重要だと捉えていて、ライブ配信でもなるべく全てのコメントに返すようにしています。

ーーDMなど他にもコミュニケーション手段はあると思いますが、全てにきちんと返すようにしていますか?

清水:そうですね。ブランドや個人に対して相談がとても多く寄せられていますが、そういった声を無下にせず、今まで頂いた質問や相談の声を反映させたサービスやコンテンツ作りをしています。

ーーでは、ファンの熱狂度合いや距離感をどのように可視化しているのか、その基準は設けているのか教えてください。

渡邉:いわゆる”いいね数”でのKPIを追っていましたが、最近はあまり役に立たなくなってきたと感じています。キャッチーなものには多くの”いいね”が付きますが、それだけで終わってしまうこともあるので、表面的な数字の扱いは難しいと思っています。コアなファンがいかにRiLiに期待を持っているかを測るために参加型コンテンツに力を入れています。例えば、メディアでデニム特集をした時は、”みんなの着こなし”をお客様から募集して、ファンの中での”いいね数”からニーズを拾い上げています。お客様の反応を細かくチェックしながら、投稿数が下がらないように気を付けています。

ーー今は多くのファンがいらっしゃいますが、いつ人気に火が付いたと思いますか?

渡邉:徐々にですね。最初は先ほどのデニム特集のような参加型コンテンツで、「自分のインスタ投稿がRiLiに掲載された!」と自身のインスタアカウントで発信してくれることにより徐々にファンが増えていきました。世の中に自分のセンスを表現したいとか、「あなたのアイディアが誰かのおしゃれのヒントになる」という状況がうまくハマったのだと思います。

ー清水さんは熱狂度合いの可視化をどのようにされていますか?

清水:RiLiさんと同じで”いいね数”があまり意味がないことはすごく感じます。共感してくれているかはライブ配信の視聴数やコメントの内容で見ることができ、お客様の反応と売り上げが結びついていることも実感しています。発信したことに対する反応を確かめることがとても大切なことで、インスタグラムでのアンケート結果や募集した質問への回答も大切にしています。

ーー「ファンを熱狂させるミレニアムブランド人気の理由」と題してお二方に話を伺いましたが、”お客様に参加してもらう”という共通のキーワードがあると感じました。非常に興味深いお話をありがとうございました。