ローンチを記念して行われたSPECIAL CONFERENCEの第一回目は、「宇宙テクノロジーと衣服」をテーマとして、森永邦彦氏(アンリアレイジ デザイナー)と肥後尚之氏(JAXA 広報)、モデレーター河野(sitateru Inc. CEO)が登壇。グローバルトップのテクロジー企業やデザインコンサルティングファーム、スーパークリエイターなどVIPのみがゲストとして招待された、完全クローズドイベントとして行われた。

服は「日常を変える装置」。ファッション以上の可能性がある

CONFERENCEに先立ち、まずはゲストの森永氏が「ANREALAGE」に宿るクリエーションの源泉について語った。

彼が手がける衣服の数々は、「常識を変える服」と評される。テクノロジーや3Dプリンターなどの最新技術と調和する独創的なコレクションの数々は、常に“時代を先ゆく衣服”として業界の話題をさらってきた。

「私たちは毎日、衣服を袖を通します。つまり、毎日『今日は何を着ようか』と意思決定が行わる。それほどまでに日常的な存在ですから、実はもっとコミュニケーションできるし、媒体としての価値を持つのではないかと考えています。

衣服には、私たちが想像しうる『ファッション』以上の可能性がある。ファッションを作る過程で、本来は使われない材料や技術を取り入れたら、従来では存在し得なかった美しさが生まれるのではないかと思っているんです」(森永氏)

ブランド名『ANREALAGE』は“A REAL -日常、UN REAL-非日常、AGE-時代”という3つの言葉からなる。日常的である衣類で、非日常を表現するーー。森永氏が残した「服は日常を変える装置」という言葉に、訪れたゲストたちが胸を馳せた。

宇宙での快適な暮らしを地球での日常に

もう一人のゲストである肥後氏からは、JAXAが衣服プロジェクトを手がける背景が語られた。

宇宙では筋肉の衰えや骨の強度が低下するために、毎日2時間の運動をしなければならない。しかしながら洗濯をすることもできず、持ち込める量には限りがあるため、1週間程度同じ下着を着用しなければならない。宇宙空間で快適な暮らしを実現するためには、衣類の開発が不可欠なのだ。

過去の印象的な事例には、宇宙空間で挙式を行うために「無重力でも綺麗に見えるウェディングドレス」の開発もあったそうだ。

「今は遠い世界に感じられてしまう宇宙も、いずれ私たちにとって身近な存在になると信じています。以前、未来学者の方が『未来は公平にやってくるものではない』と発言しているのを聞いたことがあります。しかし、私はそう思いません。たとえば、インターネットの普及によって、誰でも、どこにいても繋がりあえる世界が実現しました。

今では民間企業も宇宙産業に乗り出していますし、宇宙にいながら仕事ができる日がやってくるかもしれません。そうした魅力的な未来が、誰にとっても公平に訪れるよう、JAXAとして貢献できればと思っています」(肥後氏)

衣服の可能性を広げ、目に見えない価値を形にする

ANREALAGEとJAXA、そしてsitateruは、昨年独創的なデザインにこだわりの生地を用いた、一風堂のユニフォームを共同開発した。「ものづくりへのひたむきな想い」にシンクロするユニフォームは、ラーメンや飲食店の働き方をとりまくさまざまな固定概念を“一陣の風”で覆そうと挑み続けてきた一風堂の姿勢を見事に落とし込んだ。

ユニフォームの生地表面には特殊なプログラムが施されており、近づくと「風」の模様が、遠ざかると一風堂の理念「KEEP CHANGING TO REMAIN UNCHANGED(変わらないために変わり続ける)」が浮かび上がる。

「実際に一風堂の店舗に行き、店という固定された空間で、お客さんとスタッフの何が変わるか観察しました。そこで”人と人の距離”が変わるということに気づいたんです。普段意識しない人との距離という概念を可視化してみたいと。一風堂さんの理念とも合わせて、柄自体も変わり続ける、というコンセプトを体現しました」(森永氏)

全社員が一杯のラーメンに賭ける熱い想いがそのまま投影されたユニフォームは、メンバーを結束させた。衣服という「日常」が、常日頃共有し合う、胸に秘めた「KEEP CHANGING TO REMAIN UNCHANGED」の想いを強固にしたのだ。

また、使用したのはJAXA COSMODEの加工技術を使ったテキスタイル。宇宙空間でも快適に過ごせるこの生地を使うことで、スタッフが快適に働く環境を作り出した。

「衣服」という日常が、メンバーシップを構築し、人のモチベーションを高めることを証明した。ANREALAGE、JAXA、sitateruがそれぞれの強みを活かして創り上げたこの事例は、まさにデザイン、テクノロジー、そしてビジネスの力が3つ組み合わさったことによるイノベーションだとも言える。

「今だから言えることですが、このプロジェクトの実現までにはたくさんの難関がありました。私たちはIMAGINATIONという言葉をビジョンとして掲げていますが、クリエイティビティとテクノロジー、そしてビジネスの融合を、高い次元で実現させることが、新しいイマジネーションを成功に導くヒントになるのではないかと考えています。

衣服には、私たちが思う以上の価値があると思っています。新しい発見によって、感動するような体験を生むこともできるでしょう。衣服が持つ可能性を広げていくには、アパレル業界から裾野を広げ、テクノロジーやクリエイティビティとの融合が不可欠です」(河野)

その後、カンファレンスの参加者を交え、衣服の未来を拡張する注目のテクノロジーや、テキスタイルの進化などのテーマで、ディスカッションが行われた。

肥後氏は「ANREALAGEさんの”世界の身体を旅する服”というプロジェクトをされているように、宇宙技術が“インフラ”となって生活に溶け込んできているのを嬉しく感じる」と語った。

他にも、人工合成のクモの糸で紡ぐテキスタイルや、センシングによる衣服のデバイス化、デジタルコンテンツを纏う服など、異なる分野の知見を持った参加者によって話は多岐に及んだ。

「『Weare』は、ひとと衣服の新しい未来をつくる「場」です。今後さまざまバックグラウンドを持つ人が知見を持ち合い、これまでにないイマジネーションを作っていきたいと思っています」(河野)

衣服の持つ可能性をさらに広げ、新たなイマジネーションを創出するプラットフォーム「Weare」。そのコンセプトを象徴する第1回目となった本イベントは、ゲストを含め場を共有した人々の高い熱量によってたくさんの化学反応が起こる密度の濃い時間となった。