今すぐできるユニバーサル・デザインの取り入れ方とは?

イベントで最初に登壇したのは、ブランドコンサルタントをしながら、障がい・難病の女性のためのフリーペーパー「Co-Co Life(ココライフ)☆女子部」編集部でエディターを務める守山菜穂子さん。守山さんはこれまで読売広告社や小学館で、ファッション・クライアントと数々の仕事をこなしてきた。2012年に家族の病気・障がいをきっかけに「Co-Co Life☆女子部」を知り、出版社での経験を生かして、ボランティアでエディターとしての活動を始めた。

「Co-Co Life☆女子部」編集部 守山菜穂子さん

守山さんが手掛ける「Co-Co Life☆女子部」はNPO法人・施無畏(せむい)が2012年に創刊したフリーペーパーで、難病・障がいのある女性にフィーチャーした国内唯一のマガジンだ。障がい者による芸能プロダクションを立ち上げたり、これまでファッションショーなども開催してきた。

こうした経験を持つ守山さんは「障がいの社会モデル」を紹介。障がいは個人にあるのではなく、社会にあるという考え方だ。では、具体的にファッション業界がユニバーサル・デザインが取り入れるためには何をすればいいのか。「たとえばボタンをマグネットボタンにするだけで、ユニバーサル・デザインが完成するかというと、そうではありません。手が不自由な人にとってマグネットボタンは便利ですが、心臓ペースメーカーを使う人にとっては不安があるアイテム。少しでも多くの人が着やすい服を考えることは大切ですが、『誰もが着やすい服』は存在しません。人の身体のカタチや、機能には、多様性がある。まずはそのことを理解すべきです」と守山さん。

一方で、守山さんがオススメするのが“ソフト面”でのユニバーサル・デザインだ。「尋常性白斑(皮膚の病気)を抱えるウィニー・ハーロウをファッションモデルに起用したアパレルブランドの広告が記憶に新しいですが、たとえば、障がいを持つモデルを起用するとか、素材にアレルギーのある人と会話をするなど、アパレルメーカーさんが今日から始められることはいくらでもあります。今や日本人の13人に1人が何らかの障がいを持つと言われるくらいですから、もし100人のモデルを起用する企画なら、そのうち7、8人は、障がいや病気のあるモデルがキャスティングされて普通ということです」。

ユニバーサル・デザインを追求するYKKの挑戦

click-TRAK®

続いて登壇したのがユニバーサル・デザインを採用したファスナーなどを開発するYKKだ。YKKはファスナーのトップブランドとして、アパレル業界はもちろんのこと、一般消費者の誰もが使いやすい製品づくりに注力し続けている。イベントではファスニング事業本部ジャパンカンパニーの岩田知久さんと山本萌さんが製品の紹介を行ったが、5月にはclick-TRAK®という簡単に操作できる開ファスナーを発売予定だという。通常ファスナーを閉める際は差し込む動作が必要だが、スナップボタンの様に重ね合わせてつまむ動作だけでファスナーが噛み合うように仕組みを改良した商品だ。

また、YKKはこれまでもファスナーを左右に引っ張るだけで噛み合わせが外れるQuickFree®やファスナーを閉める際に上からも横からも挿入できるez-TRAK®など、衣類を簡単に着脱するための多種多様な製品を世に送り出している。

YKK株式会社 ファスニング事業本部 ジャパンカンパニー 岩田知久さん

YKKが取り組むのはファスナーだけではない。たとえば、開ファスナーをより使いやすくする挿入補助パーツや、さまざまな角度からの挿入が可能なサイドリリースバックル、抱っこ紐など片手操作に対応可能な被せ型バックルなど、あらゆる側面でユニバーサル・デザインを取り入れている。しかし、こうした製品を数多く作っても、最終的に製品に採用されなければ、意味がない。YKKとしては今回のイベントのようにユニバーサル・デザインの重要性を説きながら、アパレル業界に向けて発信をすることも重要な任務だという。

YKK株式会社 ファスニング事業本部 ジャパンカンパニー 山本萌さん