アイスクリーム界の“第三極”を目指す

アイスクリームといえば、思い浮かべるブランドはいくつかしかないかもしれない。そのくらいアイスクリーム業界は、選択肢が少ないのが現状だ。

「業界の先輩方に敬意を払いながらも、私たちは“第三極”を目指したいんです」(株式会社HiOLI 代表取締役社長兼CEO 西尾修平)

アイスクリーム業界での第一極はパティシエやジェラテリアがつくる独創的で繊細なアイスクリーム。職人の手作業でつくり、そのお店に行って食べるスタイルだ。第二極は、メーカーがつくるチェーン店や小売向けのアイスクリーム。工業化・量産化によって美味しいアイスがどこでも手軽に買えるようになった。

「そのどちらでもない“第三極”として大事にしたかったのは、素材の良さを引き出すということ。生産者の顔が見えるこだわりの素材を仕入れてスモールバッチでつくる、クラフトアイスクリームという新しいジャンルです」(西尾氏)

「クラフトビール」や「サードウェーブコーヒー」や「ビーントゥバーチョコレート」など、素材の味を活かし、手作業とテクノロジーを合わせながら生産する食に注目が集まっている。その潮流に近いアプローチだと話す。

HiO ICE CREAMの看板商品には、それぞれ北海道の別の地域で生産された牛乳を使った「美瑛シングルオリジンミルク」と「十勝シングルオリジンジャージーミルク」の二種類のミルクアイスクリームがある。さらに「美瑛シングルオリジンミルク」は、季節によって味が変わると言う。また、その他レモンやいちごなどの季節の果物を使ったフレーバーメニューを用意する。


「夏は牛が痩せるので、あっさりした味になりますよ。流通している牛乳は当然年中同じ味になるよう調整されていますが、あえて私たちは季節で変わる素材の味をそのまま味わってもらえたらと思っているんです。季節に合わせてレシピの微調整ができるからこそです。また果物なども、加工品ではなく、ひとつひとつこのアトリエで皮を向いて調理しています」(西尾氏)

素材に向き合うストイックさを表現

本当に素材の良さを引き出すには、かなりのストイックさが必要だ。店舗デザインやパッケージ、ユニフォームにも、そんなストイックさを表現した。店舗の半分は全面ガラスのAtelierに。内装は打ちっぱなしの壁と白で、シンプルに仕上げた。

「顔が見えるものづくりという価値観の象徴として、お客さんにはAtelierで職人たちが作っている姿を見ながら、アイスクリームを食べてもらえるようになっています。だからこそ、職人たちの立ち姿はとても重要。かっこよく見せられるようにユニフォームにこだわりたいと考えていました」(株式会社HiOLI 取締役 COO 玉井 賀子)

Atelierに立つ職人のユニフォームは、ミルクのようなやわらかい白色のAラインコックコート。見た目はもちろんのこと、機能性や着やすさにもこだわった。胸部分にはアウトドアブランドでも使われるような着脱のしやすいマグネットのスナップ。また作業性を考慮して袖の長さを七分袖にしたり、寒いAtelier内で中に防寒着を着れるようゆったりとした仕様にするなど、スタッフの要望も取り入れた。

接客・販売スタッフのウエアは、コックコートと同素材を使ったエプロン。シンプルなデザインながらも、大きなポケットをあしらい、ワーク感も出した。素材は撥水などの機能性も兼ね備えながら、天然素材の風合いを活かした生地だ。

「実際に、縫製しているところを見学させていただいたのですが、ひとつひとつ縫っていただいているのを見て、スタッフに大事にしてもらいたいなと思いましたね。完成品が届いた時にはスタッフも歓声をあげていました。やはりユニフォームはモチベーションにもつながりますね」(玉井氏)

シェアして食べる幸せを届ける。アイスクリームのサブスクリプション

もう一つ、ビジネスメディアなどでも取り上げられているHiO ICE CREAMの特徴は、アイスクリームの「サブスクリプション(定期購入)サービス」だ。会員になると、パイントカップサイズ(473ml)のアイスクリームが毎月2種類届くというもの。

最近では物流も進化して、アイスクリームを夏でも溶かさずに宅配で届けることが以前よりも容易になったという環境変化も大きい。新たなビジネスの潮流を捉えた戦略のようにも見えるが、実は「結果としてサブスクリプションという表現になっただけ」。そこには、より情動的な西尾社長の想いがあった。

「そもそも、私自身が昔からアイスクリームが好きだったというのが、一番の創業のきっかけなんです。小さい頃、忙しかった父と週末にパイントアイスクリームを買いに行って、取り分けて食べる時間が本当に楽しみだったんですね。今は、コンビニなどの影響で“個食”が進んで、パイントカップを買う人も減っている。でも、毎月季節によって違う味のアイスクリームが家に来る楽しみと、それを誰かとシェアして食べる幸せな時間を届けたいと思ったんです」(西尾氏)

いまは、まだ自分たちの姿勢がどのように受け取られるのかという実験段階。プレスリリースと口コミ、SNSなどでお客さんが集まっておりローンチから1ヶ月経たずに、Instagramのフォロワーはすでに1000人に達した。

素材に向き合い、ストイックに作られたこだわりのアイスクリーム。その価値観や姿勢を支持するファンと一緒にブランドを成長させていきたいと語る。アイスクリームの歴史に、新たな名を刻みそうだ。