JAXAと民間企業がタッグを組んで、事業を開発する仕組み、宇宙イノベーションパートナーシップ「J-SPARC」(JAXA Space Innovation through Partnership and Co-creation )。JAXAが持つ、宇宙に関する知見や技術を活かし、ベンチャーや大手企業などと共に、新規事業などを生み出している。

「これまで、JAXAの仕事は国のプロジェクトが中心でした。しかし、国の研究開発機関だけではスピード感を持ってできないこともありますし、逆に民間企業だけでは技術的にできないことも多くあります。宇宙利用の拡大というミッションを掲げたとき、民間のビジネスを支援していくだけでなく、企業と一緒になってやっていく必要性がありました」(新事業促進部 事業開発グループ J-SPARCプロデューサー 菊池優太氏)

たとえば、現場エンジニアのアイデアを、国家プロジェクトでは実現できなくとも、企業とともにビジネスとして昇華させることもできる。また、宇宙環境での課題や得たデータを、地上の商品開発に活かすということもある。

組織の垣根を超えた宇宙の新規事業開発が進む中、2018年11月に、三井不動産とJAXAの協業で、宇宙ビジネスにおける日本初の共創拠点「X-NIHONBASHI(クロスニホンバシ)」が開設された。

「共創と言うからには、”イノベーションの出島”として、もっと社外に出ていきたいという思いがありました。明日打ち合わせしようよ、で、すぐに会える環境があった方がいい。宇宙ビジネスを盛り上げていこうという気概の塊のような人たちが集まっているので、お互いに刺激になりますし、ふと立ち話が始まることもあります」(菊池氏)

シェアオフィスにはJAXAを含めた数社が入居しており、コワーキングスペースには宇宙ビジネスに関わるプレーヤーが出入りする。週3~4回の頻度で、宇宙に関するイベントや記者会見、政府と民間の意見交換会などが開催されている。

そんな中、J-SPARCチームとしてベンチャー企業の面々と仕事をする上で、違和感のある瞬間がでてきた。要因は、服装だ。

「JAXAではこれまで、筑波宇宙センターではエンジニアジャケット、私が所属する部署の拠点である東京事務所ではスーツなど、それぞれの場所で着るものの文化がありました。X-NIHONBASHIでも、最初はスーツを着ていたメンバーもいたのですが、ベンチャー企業の方々のカジュアルな服装とのギャップに、だんだんと違和感のある瞬間がでてきました」(菊池氏)

JAXAの技術や知見を持ちながら、民間や政府を巻き込んで様々なアイデアを束ねていく、宇宙事業の「プロデューサー」という新しい肩書き。そのアイデンティティを象徴する衣装として、しっくりくるウエアを模索していた。

そうして最終的に選ばれたのが、光沢感のある濃紺の生地で作られた、斜めジップアップパーカー。表面の中央にジップがないためカジュアルになりすぎず、ジップを上まであげるとスタンドカラーになるデザインが好評だ。

「着ていると、特に若い方からどこで売ってるんですかと聞かれます。衣服が持つ価値っていろいろあると思うのですが、スタンスの表明でもあるなと気づきました。セルフブランディングのひとつですよね。働き方も変わってくるし、服って大事だなと思いました」(菊池氏)

もうひとつ、”衣服の価値”として期待していることは、JAXA自体の「インナー改革」だ。

「新たなビジネスやエコシステムを創っていくには、JAXAも変わっていかなければと感じています。現状だと、まだまだ堅い組織と思われてしまいがち。新しいことにチャレンジしていくために、私たちのチームがファーストペンギンにとなって社内の空気や文化を変えていきたい。衣服もそのツールのひとつですね」(菊池氏)


J-SPARCとしては、地上の技術を宇宙で応用する、あるいは、宇宙で得られた知見を地球での日常生活に活かす、といったライフスタイル分野にも力を入れている。衣服の可能性の幅を感じる中で、今後、宇宙と衣服の分野にも取り組みたいと意欲を語る。

「様々な制約条件のある宇宙を舞台にしたとき、衣服の価値を新たに創造できるのではと思っています。たとえば、宇宙飛行士たちは徹底した健康管理が必須ですが、ウェアラブル機器をわざわざ付けずとも、服でバイタルデータを取得し、自らの健康状態をチェックできるとか。それは、将来的には地上でも、医療や介護など、ひいては日常生活でも役に立つ技術ですよね」(菊池氏)