倉庫の管理人でありながら、美術館を案内するコンシェルジュでもある。

天王洲アイル駅の寺田倉庫本社の中にある「建築倉庫ミュージアム」。様々な建築家の建築模型を『展示しながら保存する』 がコンセプトの新しい発想で作られたミュージアム。

実は、日本の建築模型は、海外の人から見ると「クレイジーだ」と言われるほどクオリティが高く、アートとして評価されるている。にも関わらず、保管したり展示したりする場所がなく、建物が完成したら廃棄されるか、事務所に眠っているという現状があった。

それを、ウェアハウスミュージアムに仕立て上げたのが、「建築倉庫」だ。

働くスタッフたちの役割も、普通の美術館で言う「監視」とは一味ちがう。国内外からのお客様たちを建築模型の世界へ案内するコンシェルジュでありながら、一方で館内を歩き回って模型を修復・保全する役目も果たすのだ。

建築倉庫の館長を務める徳永さんは、スタッフの仕事をこう話す。

「どんどんお客様とコミュニケーションを取ってくださいと。そして、模型の修復もお客さんがいても日常のようにやってもらう。あえて”LIVE感”を出し、倉庫としての機能をおもしろく魅せる。まさに、美術館と倉庫の間をいく建築倉庫の顔ですね」。

誰かの色ではなく、自分たちの色でブランドイメージを染め上げていく

徳永さんは、そんなスタッフたちに、お客様からの見栄えもよく修復作業もしやすいコートをつくりたいという思いを温めていた。有名なファッションデザイナーやブランドに依頼するという案もあったが、そうするとイメージにそのデザイナーの色がついてしまう。「自分たちの色に染めていける、そんなユニフォームにしたい」ただ、カタログから型と色を選ぶ、いわゆる「オリジナルユニフォーム」も違うと思った。

小ロットだけれど1から完全オリジナルの服を作れるところはないのか…、 探していてSNS上で偶然出会ったのがシタテルだった。

スタッフに寄り添ったコートは、倉庫と美術館の間をいく「建築倉庫」というブランドそのもの

丈や形、色、生地、裏地、刺繍など、ひとつひとつにこだわり、スタッフの声も交えながら一緒に作っていった。作業が多いため、屈んでも下につかない丈。さらにコートベルトを付け、自由にアレンジして動きやすくできるような設計にした。

色は、はじめはブラックを考えていたが、鑑賞のノイズにならないようグレーに。徳永さんの「日常のはっとする瞬間の気づきのようなものを大事にしたい」という考えから、裏地を蛍光イエローにして、袖を折ると少し色が出るという遊びゴコロをいれた。何度も議論を重ね、こだわって作ったユニフォーム。出来上がって手元に届いた時、スタッフもとても喜んだと言う。

スタッフからの評判も良く、デザイナー渡邊さんも一安心。

「何かを着るっていうのは責任感が生まれるし、彼らで自身で『建築倉庫』というブランドを作っていってほしいっていう思いがありました」。

一枚の布から仕立てる服。一ミリの部材から作る建築模型。ファッションと建築はとても似ている

「海外だと基本は建物だけ。ポンとつくってあとはCADということも多い。日本人は、模型を何度も修正して作り込むし、家具や人まで作る。というのも、日本では、人を主役として建てる建物がとても多い」。

建築倉庫には、何度も作り直された同じ建物の模型が並んでいたり、無名な建築家の作品や実際には建設されなかった模型もたくさんある。それでも、その一つ一つの模型には、建築家の思想が詰め込まれている。

建物をどう考えているのか、なんでこの形にしたのか、過程を読み取って楽しんでほしいと、徳永さんは話す。

「ファッションと建築はほぼイコールみたいなもの。工房や職人を大事にしたり、作り方やディールを大切にしているのはすごく似ているんじゃないかなと思います」。

今後は、このような素晴らしい日本の建築文化を海外にも積極的に発信していきたいと、いろいろな計画を進めている。日本の建築模型は、人を中心としたデザイン、過程を大切にする姿勢を、一種の”アート”として伝える力がある。

たしかにそういう意味では今回のユニフォームも、見た目のデザインから入るのではなく、”スタッフの役割・在り方”を中心に、過程も大切にしながら作り上げた。

そんなこだわりのコートを纏い、ひとつひとつ模型の説明をしたり、さり気なく修繕作業をするスタッフの姿。模型たちが日本建築の魅力を伝えるように、彼らひとりひとりが他にはない”建築倉庫ブランド”を伝えるアイデンティティ的存在そのものになっていた。