時を忘れてゆっくりとした時間を楽しむホテル

新大阪から、紀伊半島の海岸沿いを走る電車に揺られ、約4時間。本州最南端の街、串本は、熊野の山々と太平洋に囲まれた、秘境とも言える場所にある。その不便さも逆手に取って、ゆっくりとした時間を楽しむ贅沢な古民家オーベルジュが、NIPPONIA 串本だ。

「串本の街全体をホテルと捉え、暮らすように泊まってもらいたいのです。忙しく過ごす人々に、時を忘れて読書や自然を楽しむ場所として、ゆったりと過ごしてもらいたい。だから、お部屋には時計やテレビを置いていません。不便さを生かして、時間と空間を贅沢に味わえるところです」(NIPPONIA 串本 新谷紘平マネージャー )

串本を含めた熊野エリアには、昔ながらの瓦屋根のお屋敷や石垣など、歴史を感じさせる街並みが残っている。しかし、老朽化や空き家となった建物も多く、古民家再生のプロジェクトが進んでいる。その一環として、串本町などが改修した古民家2棟を、今回NIPPONIA 串本がホテルとレストランに仕上げ、7月にオープンした。

神事をイメージしたラグジュアリーな羽織でおもてなし

ホテルは贅沢な一棟借り。特別な時間をおもてなしするための、スタッフのユニフォームやアメニティなどにもこだわった。

ユニフォームは、神事や祭りの多い熊野という土地柄もあり、古民家とも雰囲気の相性がいい半纏(はんてん)をベースに構想。昔ながらの半纏からイメージを覆すような、洗練されたデザインに仕上げるために工夫を凝らした。生地は、世界のメゾンブランドも使用している、ラグジュアリーなブラックデニムを使用。襟文字には「NIPPONIA KUSHIMOTO」と英字を刺繍し、格子柄でシックなイメージに仕上げた。


こだわりは、普段見えないところにも。内ポケットに使用したのは、トルコ柄の生地。実はその昔、明治時代に串本沖でトルコ船が遭難し、一部の人を住民が救助したという歴史がある。以来、串本ひいては日本とトルコは長い交友関係が続いている。そんな、串本ならではのストーリーを服に落とし込んだ。

トルコ柄の生地は、客室に備え付けたアメニティ袋にも使用した。伝統的な日本家屋のアンティークな雰囲気と、不思議とマッチする。さりげないアクセントで、ゲストとホストの間に、会話が生まれそうだ。

未知なる宝を発見し発信する

レストランでは、熊野の山と海の恵みをふんだんに使用し、炉端で火を入れる「原始焼」を中心とした素材を味わう料理を提供。

「黒マグロ、地魚、柑橘、ジビエなど、紀南ならではの自然素材がたくさんあります。ホテルのゲストだけでなく、地元の方にも、接待やお祝いごと、地元の商工会の食事などにお使いいただいています。串本にはあまり新しいお店がないので、別世界だねと言ってもらいました」(善養寺 充 シェフ)

串本は観光地としてまだあまり開拓されておらず、地元の人にとって、ここがひとつの寄り合いとなり、串本の魅力を発信していく拠点となることも目指している。

「地元の人にとっては、美味しい食材や、自然も当たり前なんですよね。私たちは、そういった“未知なる宝”を発見し、発信していくということをミッションに掲げています。ゲストの人も、地元の人も、どちらも幸せになってもらえたらと思います」(新谷氏)

今後2020年にかけて、地域に点在する古民家をリノベーションし10棟15室にまで、拡大予定だ。街全体をホテルとしてゆっくりとした時間の中で自然を楽しむ、新たなラグジュアリー旅行地が生まれそうだ。