“通販ブランド”から“ビューティブランド”へ

2018年10月からスタートした、オルビスのリブランディング。ブランドロゴやコーポレートカラーの見直し、象徴スキンケア「オルビスユー」のリニューアルなど、大きな変革を進めてきた。

「今回のリブランディングには、通販ブランドからビューティブランドへ進化していくことがテーマとしてあります。そのために、顧客接点の見直しや店舗のブランド価値を高める施策を打ち出しています」

そう話すのは、オルビスマーケティング戦略部 ブランド統括グループ クリエイティブディレクターの小椋浩佑氏。通販ブランドとしての認知度は非常に高いが、特徴や他社との差別ポイントはあまり知られていないということが課題だった。そこで、新たな顧客層を獲得するため、ビューティーアドバイザー(以下、BA)を介して商品の魅力を伝えることができる店舗の体験価値を高め、ブランドの思想と商品によって、顧客と深く繋がれるブランドを目指した。

「ブランド全体として大切にしているのが、自分らしく生き生きと年齢を重ねていく“スマートエイジング”という思想。創業以来、“肌が持つ本来の力を信じ、不要なものには頼らない”という信念のもと、ひとりひとりの美しさを引き出す商品づくりをしています。この考え方を、接客やコミュニケーションを通して、ブランド価値として伝えていきたいと考えていました」(小椋氏)

社内から顧客へブランドの思想を伝播する

店舗で働くBAは、商品の説明だけでなく、そうしたブランドが大切にしている思想をお客様に直接伝えられる唯一の重要な役割も担っている。決められたものを全員が同じように身に付けるのではなく、働くBAひとりひとりの個性を引き出すことで、ブランドが目指している思想を表現したいと考えた。そこでポイントになったのが、インナーブランディングだ。

「オルビスは全国に店舗があり、BAは約800人在籍しています。リブランディングという今までにない大きな変化が訪れ、なぜオルビスがリブランディングをするのか、目指している姿を伝えていくことが大切だと考えました」(営業部 営業統括グループ 仲井 香耶子氏)

目に見える商品やVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の変化だけでなく、ショップのBAを通してブランドのメッセージをお客様に届けていきたいと伝えていった。

ブランド思想と個性を掛け合わせて初めて完成するワークウェア

ブランディング施策のひとつとして行ったのが、ワークウェアのリニューアルだ。衣服が着る人のマインド、さらには顧客の潜在イメージへ働きかける要素は大きい。

「お客様に選ばれるブランドになるために、新たに掲げたキーカラーや思想を軸としながら、そこにBAの個性を合わせて初めて完成するウェアにしたいと考えました。既存の枠組みに囚われない形で作りたいと思っていたところ、Weareで他社の記事を読み、思いを叶えてくれると感じたのでsitateruに相談しました」(小椋氏)

“ひとりひとりの美しさを引き出す”ことをポイントにデザインコンセプトを構想した。一つは、服自体に色を付けるのではなく、影を活かした自然にできる色のグラデーションを生み出すデザインであること。もう一つは、BAの個性を生かすために色々な着方ができる可変性があることだ。

ウェアデザインは、sitateruのデザイナーマッチングにより、ウィメンズブランド「スエサダ(SUÉSADA)」のデザイナー末定亮佑氏が担当した。

「トップスは白の単色にし、陰影により白からグレーへの自然なグラデーションが生まれるように工夫しました。また、体型や年齢の多様性を享受し、着る方の個性や美しさを引き出すような自然体のニュアンスを意識しました。オルビスの方々と共に、違う視点で意思疎通しながら、ひとつのチームとしてものづくりができたことは新鮮でしたね」(デザイナー 末定氏)


トップスのシャツは、裾のタックイン・タックアウトを選べて、自由に着こなしができるデザインにした。また、襟元のボタンも、人によって開け具合を調節できるように隠しボタンを加えるという、細やかな工夫を凝らした。

「“美容部員っぽい”とか“制服っぽい”という固定概念に沿わせるのではなく、ブランドの思想や個性を活かしたいという思いを、末定さんがデザインという形で代弁してくれました。想像以上にステキなものを一緒に作ることができたと思っています」(小椋氏)

衣服が、着る人や見る人の意識を変える

新たなワークウェアにより、自然と社内に新たな服装ルールを作る動きが生まれた。アクセサリーやスカートの下に履くレギンスなどのレギュレーションも幅が広がり、実際に店舗で働くBAの橋本さんは、ワークウェアが切り替わって、意識も変わったと言う。

「ファッションの自由度が高まったことで、日によって着方や髪型、アクセサリーなども変えていて、以前より身だしなみに対する意識も高まりました。ミステリーショッパーによる顧客満足度調査でも、身だしなみに関する項目が全て満点でした。お客様から雰囲気が変わったと言ってもらえることもあり、嬉しいです」(橋本さん)

また、2019年6月に全国のオルビス店舗で働くBA89名にとったアンケートでは、新ワークウェアのデザイン性に対する満足度は、5点満点中4点以上が80%となり、旧ワークウェアの22%と比較して58ポイント向上。特に、「新しいワークウェアは、ブランドイメージと合っていると思いますか」という質問に対し、全体の92.1%が「とても思う」「そう思う」と回答。その他「店舗(企業)に一体感が生まれた」、「いきいきと働けるようになった」という質問に対しても、全体の約8割前後が「とても思う」「そう思う」と回答した。

店舗の雰囲気が変わったことで、今までブランドとの接点がなかった属性の顧客も訪れるようになったと言う。また、新しいワークウェアは採用面にも嬉しい変化をもたらした。

「新しいワークウェアで採用ページの印象は明るくなりましたし、働く光景に憧れてオルビスの仕事に興味を持つきっかけにもなっていると感じます。自分の好みを合わせることができるようになったことで、楽しさや個性が生まれました。新しいウェアがきっかけで、BAがしているメイクやネイルについても関心を持って頂けて、お客様とのコミュニケーションも以前より増えたと思います」(仲井氏)

昨年の10月にリブランディングをスタートしたが、人が持つ本来の美しさを引き出すビューティーブランドとして、今後もフレキシブルに変化し続けていきたいと小椋氏は話す。変革をポジティブに捉えられるマインドセットを社員全員が作っていくことが、今後さらに重要になっていくだろう。