”問い”は人と人がつながる交差点

日本にもコワーキングオフィスやインキュベーションスペースが増える中、SHIBUYA QWSの特色は「Question(問い)」を起点に人が集まる場所という点。「QWS」は「Question with sensiblity(問いの感性)」の頭文字だ。渋谷のど真ん中という場所柄を考え、このコンセプトに行き着いた。今回、QWSのクリエイティブやコミュニケーションをパートナーとして手掛けたロフトワークの山田麗音氏はこう語る。

「問いは、いろいろな価値観の人が集まれる交差点。スクランブル交差点を上から見ていると、全く知らない人同士、直接接触することはないけれど、お互いに阿吽の関係性でぶつからずそれぞれの目的地へ向かう。ある意味ひとつの集団のパフォーマンスに見えてきます。それに象徴されるように、渋谷という街は、人が間接的に影響し合いながら生み出されるエネルギーにあふれている。誰もが共通で感じている社会課題だけではなくて、個人が感じている小さい違和感や疑問が、次第に文化になっていくこともあると思っています」(株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 山田麗音氏)

ターゲットは、あえて狭めない。平均年齢77歳のスタートアップ企業が入居していたり、高校生がイベントを開催することもできる。取材に行った日には、子供も一緒に参加する母親向けのワークショップが行われていた。

世代や専門領域が違えば共通言語も異なる中で、社会の課題や興味関心を「問い」というニュートラルなものに落とし込むことで、共感が生まれるかもしれない。「こういう問題があるからこうすべき」という答えを先に提示するのではなく、まず「問い」を立てて「分岐点」をつくっていく。あえて受け取り手に委ねることで参画できるという意図だ。

受け取り手に委ねる部分をつくる

コンセプトは空間やクリエイティブにも落とし込んだ。キービジュアルは、見た人に解釈を委ねるようなものを意識。また、常駐するスタッフを「コミュニケーター」と呼び、そのウエアにもこだわった。

「コミュニケーターは、問いの専門職であって欲しいと思っています。会員といろいろなコミュニケーションをとってもらう中で、彼らを制服というひとつの記号で包み込んでしまうのはどうなのかという議論になりました。そこで、それぞれの個性も浮かび上がらせながら、コミュニケーターだと認識できるように、トランスペアレント(透明)な素材のコートを作ろうというアイデアがでました」(山田さん)

そこから、耐久性や手入れのしやすさなども考慮しながら、透け感のある生地を選び、サイドに大きくプリントを入れた。遠くから見てもすぐにコミュニケーターだと認識できるが、近づくと中に着ている私服によってがらっと雰囲気が変わって見える。

「会員とコミュニケーターの距離感によって、映り方が変わるというところもポイントです。初めはフォーマルなユニフォームを着たスタッフに見える。でも、何日も同じ空間にいれば距離が近づき、その人を個人として認識し、コートの奥にあるパーソナルな部分にフォーカスされていくはずです。受け取り方をそれぞれに委ねるというところにも繋がってくるんです」(渋谷キューズ コミュニティマネージャー 宮本明里氏)

世代を越えたミーティングポイントに

渋谷の街に根付く、音楽やファッション、アートなどのストリートカルチャーを取り巻く人々こそ、社会課題の当事者であることも多い。またそれらを活用した問いの解き方もあるかもしれない。そういった、渋谷の地上で起きていることを、どうやってこのビルの15階にあげてくるかが課題だ。

「ストリートカルチャーなど若者文化や、もっと下の世代の子どもたちも含め、ピュアな問いをどんどん混ぜ込んでいきたいんです。問いの集まるQWSが、いろんな領域の人たちにミーティングポイントになるといいなと思っています」(山田氏)

「共創」は近年一層注目されるキーワードだが、異なるバックグラウンドの人同士が繋がり合うとき、そこに文脈と意味が必要となる。そういったミーティングポイントとして「問い」が活用されていく場にしていきたいと語る。