「当時は大量消費されていた90年代の洋服が今やビンテージと呼ばれるようになりました。僕は古着が好きだからこそ、捨てられないで残っていることが素晴らしいと感じたんです。だからこそ使っても壊れにくいワークウエアがブランドのコンセプトになりました。30年後にデッドストックになれるような、価値のある服を作りたいと思ったことがブランド創業のきっかけです」(木村氏)

ALLYOURSが尊敬する企業はパタゴニアだ。ロングライフをうたい、サステナブルなブランドの代名詞と言えるほど有名なブランドだが、CSRとして環境保護を打ち出すだけでなく、自然環境が維持できなければパタゴニアを着るシーンがなくなってしまうという意味で、同社にとって自然保護はブランド存続に欠かせない活動となっている。自然保護という社会的意義と経済成長が一致していることに木村代表は惹かれたという。

なぜ作った洋服が余るのか?

大手アパレルのサプライチェーンを見てきた木村代表に“サステナブル”について考えていることを聞いた。まず考えるべきは「なぜ洋服が余るのか」だと強調する。

「大手アパレルでは一品番あたり数十万着のオーダーをします。それらがニーズに応じて作られているならいいんです。大量生産自体が悪ではない。問題は、誰に買ってほしいのかが明確になっていないことなんです。だから作った洋服が余ってしまう」(木村氏)

もちろん、洋服の生産段階で「30代で子供のいる年収580万円の男性」などのペルソナはある。ただ、そこにリアリティがないと感じていたのだ。顔の見えない相手のために数十万着の洋服を作る。そこに違和感を感じたという。

加えて、木村氏は「企業成長のための増産」というアパレル業界における違和感を感じてきた。

「最初はニーズがあるからこそ増産をしてきたブランドも、やがて目標とする企業成長に対して増産をするようになります。生産量が自分たちの売りたい額に応じて決められるようになるんです。経済発展が必ずしも右肩上がりにはならない時代に、いつまでも企業だけが成長するというのは幻想でしかないと思いました」(木村氏)

マスが存在しない時代のブランドの存在意義

2010年以降のインターネット、SNSの発展により、コミュニティは趣味嗜好ごとに細分化され始めた。かつてのようにCMやテレビドラマで着用された洋服が飛ぶように売れる時代は終わり、マスアプローチではなくターゲットをしぼったブランディングが注目を集め始める。「北欧、暮らしの道具店」などが好例だろう。

ターゲットを小さく絞ったブランドに共通するのは明確な世界観やストーリーをもっていること。まさに共感の時代と呼べる。大手アパレルもしだいにストーリーや機能性・こだわりを打ち出すようになった。これはここ5年くらいで見られたアパレル業界の大きな変化ではないだろうか。2015年にスタートしたALLYOURSのアプローチはさらに特徴的だった。

「商品企画をする際には洋服を余らないように作ろうと考えて、顧客の解像度を100%に近付けることを意識しています。具体的には明確なターゲットを1人作る。そうすればその人が買ってくれるわけで、1着だけ作れば絶対に余ることはありません。だけど、その人に向けて作った洋服は同じコミュニティにいる少数の人にだって届く可能性がある。ミクロなニーズを横展開することでブランドを大きくしてきました。上からコミュニティに洋服を投下するのではなく、あくまで同じ目線で洋服を作るんです」(木村氏)

口コミが届きやすいSNSという時代背景もあり、ALLYOURSは顧客と同じ目線でブランドを拡大することに成功した。ALLYOURSのロゴは左寄りの不均衡なバランスをとっているが、ここには、「すべてはあなた(=U)が中心である」という顧客中心主義があるのだという。

いずれは工場のあり方も変わらなければいけない

洋服を余らせないようにしたくても、どのくらいの人が洋服をほしがるのか、結局は推測の域を出ないではないか、と聞いてみた。

「たしかに何人が洋服をほしいのか正確にはわかりません。だから、クラウドファンディングを始めたんです。解像度を100%にするための手段でした。べつにクラウドファンディングじゃなくてもかまいません。予約販売でも受注販売でもアナログなやり方でもいいですが、解像度を上げるための手段はアパレルであれば誰しもがやるべきだと思うんです」(木村氏)

しかし、無駄な洋服を作らない、つまり、解像度を100%に近付けようとすれば、原価率が上がってしまい、効率的なブランド経営は難しくなる。こうした点を木村氏はどう考えているのだろうか。

「それは自分たちが苦しんでいるところでもあって、新しい販売に対しては新しい考え方を持った生産が必要になると考えています。現在のサプライチェーンはうまく機能分化させることを追求してきましたが、今や生産拠点もアフリカや南米へと広がり、コストを維持しながら大量生産することがどんどん難しくなっています。将来的には、機械によって全ての工程を担うことができるような“ワンオペ”工場も出てくるでしょう。そうなると、サステナブルな洋服作りはさらに実現できるのかもしれません」(木村氏)