4月24日、ファッションのサステナビリティを考えるカンファレンス「FASHION REVOLUTION DAY 2019」が渋谷で開催された。ファッション業界に大きな衝撃を与えた2013年4月24日バングラディッシュで起きた縫製工場崩落事故をきっかけに、毎年4月24日を含む1週間を「FASHION REVOLUTION WEEK」として、世界中でキャンペーンが行われている。

鎌田安里紗さんは、このイベントの企画運営に3年前から関わっており、赤澤えるさんは今年トークセッションに登壇した。二人は、同じ思想や課題感を持った同世代として3年ほど前に知り合い、今では一緒に海外旅行にも行くほどプライベートでも親しい仲だ。少し前からファッションとサステナビリティについて考え続けてきた二人の目には、いまのファッション業界が、どのように映っているのだろうか。

本気で取り組まないとチープでダサくなってしまう

ー今年の「FASHION REVOLUTION DAY」の手応えはどうでしたか。

鎌田:今年は反響が一番大きかったです。でもイベントの企画がどうというよりは、時代だったんじゃないかという感じがしてて。約350人の方が参加してくれました。

赤澤:エシカルがいま流行り言葉みたいになってることもあって、求められていたね。

鎌田:そうなんですよね、エシカル、サステナブルを業界全体がやんなきゃなっていうタイミングなんだと思います。SDGsもあるからかな。大きな会社でも、今まで個人的に活動してたエシカルやサステナブルに関する取り組みを会社が応援してくれるようになったと聞きます。えるちゃんもそうですか?

赤澤:まさにそうです。私の会社では、ストライプアワードという社内表彰があって、売上達成率、顧客満足度など売上達成率1位など確かに実績は出したけれど、私たちに大賞を贈るということはそれだけが理由ではなかったように受け取っています。私たちが受賞したことでエシカルという考え方にさらに注目が集まると、大勢の人も感じてくれた。

ー社内では、エシカルへの取り組みってどんな感じなの?

鎌田:ファッションレボリューションでは、SNSで世界中の人が服と一緒に「Who made my clothes?」という投稿をして、ブランドや生産者の人が「I made your clothes.」って答えるキャンペーンが軸になっていて。それに参加してもらえないか、ストライプのSDGs推進室の方に相談したら、社内の方を巻き込んで、結果「@stripe_imadeyourclothes」っていうインスタのアカウントをつくって、生産者さんの写真を集めて投稿してくれて。約300枚も!

赤澤:そうなんだよね。それはすごく良かった。やっぱり、表面的なことじゃ全然足りないから。会社からすると、何もわかんないから教えてみたいな状態。SDGs推進室の人と、社内にどうやって伝えていくか話してるところだよね。

鎌田:さらに、イベントが終わっても、そこで終わりじゃなくて、次なにしましょうねみたいな話をできているのがすごいいいなと。イベントをきっかけに、ストライプさんだけでなく他の会社やメディアも一緒にやりたいという話が立て続けに。

ーすごくいいことだけど、エシカルが消費されるトレンドにならないといいね。

鎌田:そんな気配がありますよね。

赤澤:もう、エシカルって言わないとヤバイみたいな空気は、別に悪いことじゃないかなとは思うけど、悪い方向には向かっていると思う。もっと興味を持って本気でやらないと、チープでダサい感じというか、誰も本質的なことは理解をしていないモノづくりばかりになりそう。これまでファッション業界の人たちが大切にしてきた「それはお洒落か、かっこいいか」というセンスを大事にして、ちゃんとファッションに落とし込まないと。結局エシカルって可愛くないねとか、値段高いねっていうイメージを広げるだけになって、意味がない。

エシカルとかサステナブルという言葉は「問い」

鎌田:今までって、ファッションのなかに“エシカルファッション”っていうカテゴリがあって、人権や環境のこと考えてる人たちいるよね〜って感じでしたが、あらゆるジャンルのファッションの人たちが共通でサステナブルとかエシカルとか考えるという状況になりましたよね。すごくいいことだと思う。そこからどんなものづくり、どんな会社のあり方が生まれてくるのか、楽しみではあります。

赤澤:楽しみではある。でもやっぱり、興味があって、自分にミッションを感じて、使命感を感じていて、さらに思考を続けるっていうことをしていかないと。薄っぺらいと消費者にもすぐ見抜かれるから。本当に業界を良くしたくて、世界を良くしたいって思ってる人たちがやらないといけない。

鎌田:そう。結局、エシカルとかサステナブルとかって言葉は「問い」。環境を悪化させようとか、誰かを搾取しようって思ってなくても、知らないうちにそうなってしまうかもしれない。その可能性を自覚して「何か問題はないかな?」「もっと出来ることはないかな?」と考え続けることそのものが、エシカルとかサステナブルですよね。何したらエシカルって認められますか?って、そういう話ではないと思う。

赤澤:エシカルって人それぞれの価値観があって。たとえば、ストライプでは会社として、動物愛護の観点でレザーを使わないっていう方針なんですね。でも、長く使い続けられるとか、死んでしまったものをリユースするという意味では、動物の皮を使うこともエシカルと言えるんじゃないかって思っていて。全く逆ですよね。結局考え続けて、自分の答えを見出さなきゃいけない。

 私は、海外にビンテージの買い付けにも行くのですが、何十年前のレザーものが出てくることはあっても、何十年前の合皮が出てきたことはほぼない。あと、実際に動物が解体されるところも、ありちゃんと一緒に見に行った。グロすぎて無理かもって思ったけれど、美しいし、人間の営みとして昔からあるなと。それに私はお肉食べるのも好き。だから、無闇に殺すのは違うと思うけれど、人間の営みとして、大事に長くレザーを使うことの方が、今の私個人の気持ちとしては美しいなって思っています。


ーそうですよね、みんなお肉は食べてるもんね。

鎌田:動物由来のものを避けたい人の選択肢として、ヴィーガンレザー、フェイクレザーは必要だし、食肉産業も皮革産業も動物の尊厳を考える必要はある。だけどお肉は普通に食べてて、レザーは全面的に禁止ですっていうのは、それこそ思考停止。掘り下げて考えたら、食肉用に犠牲になった命の皮だったら、むしろ使ったほうがいいとも考えられる。

赤澤:前に、会社の人たちを昼休みの時間に観察してたんですよ。多くの人が皮の財布、皮のカバン、革靴履いてて、レザーのベルトをしていて。正直変なのって思った。それで、なんでそのお財布選んだのって聞いたら、お祝いとかプレゼントとか特別な時だったからとか、長く使えるからとか、皮製品っていうのを素晴らしいものとして捉えてる。みんな特別なものとして迎えるために、皮を選んでる時点で、本来はお客様に提供しなきゃいけないと思う。その思想まで。

鎌田:私も皮製品を使います。時代的に皮ダメっぽいからやめとこうでは、本末転倒感がありますよね。

組織にいようとひとりの人間として気持ちが悪いものづくりはしない

ー二人は、いつからエシカルを考えるようになったんだっけ。

赤澤:私は、買い付けでLAに行って、大量の古着の山を目の当たりにした時かな。もちろん、写真とか映像では服が余ってますっていうのを見たことあったけれども、なかなか自分事になっていなくて。リアルじゃなかった。あれを全員が体験するのは無理だと思うけれど、もっとみんなが考えられるような、機会をもうけるしかないと思う。それで思わずSNSに投稿したんだよね。3年くらい前か。

 
 
 
 
 
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赤澤える / ERU akazawa 🇯🇵さん(@l_jpn)がシェアした投稿

鎌田:その投稿を見て、私とえるちゃんをどっちもフォローしている方が「こんな人いますよ!」って私に教えてくれて、知り合ったんですよね。

赤澤:そう、DMして、アメリカから帰国してすぐ会って。元Ranzukiモデルってことしか知らなくて。“エシカルファッションプランナー”っていうことさえ分かっていなかったから、エコとかそういう考え方ってわかりますか?みたいな、いま考えると超恥ずかしいことを話してた(笑)

鎌田:いや全然大丈夫(笑)最近改めて、なんでエシカルファッションと呼ばれるブランドが好きなんだろうって考えたんですが、そのブランドの人たちが自分で考えぬいた結果としてプロダクトがあって、そのことをすごく丁寧に語ってくれるからなんですよね。そこに哲学があるからこそ、心を動かされるし、お金を払いたいと思うし、応援したいと思う。

 その結果として“エシカルファッションプランナー”という謎の肩書きを名乗りはじめたんです(笑)だから、ビジネスライクなだけのエシカルの取り組みって全然おもしろく感じない。でも、ビジネスとして成立させるのが必要なのは変わりないから、何が大事なのかなっていつも真剣に考えています。

赤澤:私は、会社が新しいことをやってくれることが、社会に対するインパクトになるってこともすごくわかってるから、どっちもやりたい。

鎌田:えるちゃんを見ていて思うのは、組織にいようと、ひとりの人間として気持ちが悪いものづくりはしないし、いいと思う仕組みでやっていくことを諦めない、ということに尽きる。それがものすごく難しいのはわかるけど、それが結局エシカルにつながる、サステナブルにつながる。会社が大きいからできないとかは理由にならないですよね。

赤澤:えるさんは特別ですもんね、みたいなことを社員の人からも言われることあるけど、私は元々この会社にカメラマンとして入ってるし、しかも日雇いだったからね。変だなって思ったことを変だなって言って、自分で直せるところは直していった。だから、言えない立場を脱することなんていくらでもできるというか。仲間と集まって言うでも、社長にお手紙書くでも、上長に言ってみるでもいいと思う。疑問に思った人にチャンスがある。

鎌田:誰かが特別で、私は特別じゃないって思ってるのはもったいないですよね。