1970年代半ばにファッション・デザイナーであるマルコム・マクラーレンがSEX  PISTOLLS(セックス・ピストルズ)にパンク・ファッションを着せ込み、バンドのイメージ作りを仕掛け、ロンドンにパンク音楽とファッションの一大ムーブメントを巻き起こした。

1990年代にはNirvana(ニルヴァーナ)のカート・コバーンが、ボロボロのデニムやネルシャツ、カーディガン、スニーカーを着用し、そのスタイルが彼らの音楽性グランジが指示されるとしてにグランジ・ファッションともに絶大な支持を社会現象になった。

こうした現象の背景には、88年に「Maison Martin Margiela(メゾン・マルタン・マルジェラ)」が『シャビー・ルック』という古着を素材にこれまで主流とされてきた華やかなでエレガントなスタイルにアンチテーゼを掲げ、パンク・ファッションを昇華させたスタイルでデビューしたことが、グランジファッションの先駆けだとする説もある。

このように音楽とファッションの関係性を解きほぐせば、挙げられる事例は枚挙に暇がない。ファッションの側からミュージシャンに接近した事例に加えて、音楽やそのミュージシャンの圧倒的な存在感が、ファッションとして大衆に広まっていまった事例も。

いずれにしても音楽にしろ、ファッションにしろ持ちつ持たれつ、近づいたり、時に忌み嫌い合いながら、進化を遂げてきたといえる。今回は現代にまで通ずる、ファッションと音楽の関係性の一端を紹介していく。

エディ・スリマンが示した目利きとしてのアーティスト起用

例えば、スキニーデニムや細身のシルエットをこれでもかとばかりにメンズファッション界に取り入れた立役者として知られるデザイナーのエディ・スリマンがこれまでにコラボレーションしてきたミュージシャンは数知れず。

2001年から2007年にエディ・スリマンがクリエイティヴディレクターに就任していた、「Dior Homme(ディオール・オム)」では、0405のAWコレクションにバンドPhoenix(フェニックス)の音楽を起用するほか、0708 AWコレクションに無名の新人バンドTHESE NEW PURITANS(ジーズ・ニュー・ピューリタンズ)を起用するなどで話題をさらった。

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2012年に「YSL(イブ・サン・ローラン)」のクリエイティブディレクターに就任すると、ブランド名を「SAINT LAURENT(サン・ローラン)」と変更しロゴを一新させたほか、サンローラン ミュージックプロジェクトを発足させて、自らがBECKやDAFT PUNKを撮影するなど、様々な改革で売り上げを増加させた。

2016年4月に同ブランドのクリエイティヴ・ディレクターを退任してからというもの、しばらくファッションブランドの最前線から離れていたが、2018年になるとセリーヌの新しいクリエイティヴ・ディレクターとして業界の最前線に帰ってくるという報道があり、業界に激震が入った。2019年SS期からメンズも取り入れたコレクションを発表するものと噂された。そこでどんな若手音楽家が起用されるのか、今から注目しておきたい。

ゴーシャが果たすモスクワで勃興するストリート・アンダーグラウンドシーンの旗手としての役割

またメゾンブランドに限らず、次世代を担う若いデザイナーの間でもそれぞれが共闘しあいながら切磋琢磨している様子が窺い知れる。例えば、ロシアのモスクワでは1988年生まれのデザイナーゴーシャ・ラブチンスキーがいる。

彼のコレクションは、世界のメゾンからも熱い視線が注がれている。実際に2018AWではBURBERRY(バーバリー)とのコラボレーションを実現させている。

 彼のコレクションの特徴はモデルは基本的にストリートでキャスティングを行っているという点。また、音楽を手がけたButtechno(ブテクノ)が 18SS コレクションのために音源を製作したり、その恋人Kedr Livanskiy(ケドル・リヴァンスキー)もアーティストとして、アングラ・エレクトロニカとしてロシアの音楽シーンでアイコン的に扱われている。

こうしたコラボレーションによって、音楽とファッションがストリート発で箱庭的であったカルチャーシーンをオーバーグラウンドなものとして盛り上げることに成功している。

国内でもコミュニティの相互送客として広まるコラボ事例

日本の新興ブランドにも注目したい。山岸慎平が手掛けるメンズブランド「BED j.w. FORD(ベッドフォード)」は、2017年SS期をもって初の東京コレクションデビューとなったが、その際に若手バンドyahyelがコレクションの音楽を担当した。先日、フィレンツェ、ピッティウォモで行われた019年SSのショーでも楽曲を提供している。

また、先日渋谷ヒカリエで行われた青木俊典氏が仕掛けるブランド「bodysong.(ボディソング)」のコレクション発表では、川谷絵音率いる「ichikoro」の生演奏と共に行われることでも話題になった。これらの新興ブランドを音楽の切り口で見ると、また違った発見ができるかもしれない。

他にもアーティスト自身がブランドを掲げる事例が出てきている。それはファンアイテムであったグッズという部分からさらに拡張して、ファッションアイテムとして成立するようなブランドだ。

こうしたコラボレーションが繰り広げられている背景の一つに、ファッション単体ではなく、音楽というファンコミュニティを持つカルチャーに接近することで、アイテムにストーリーと付加価値を持たせたいという思惑があるのではないだろうか。アーティストとしても洋服やグッズというファンアイテムを手にすることで、コミュニティとして活性化するという狙いもあると言えよう。

ストーリーやバックボーンがないファッションアイテムに共感を持ちづらいとされる時代、共感こそが購買につながる時代ならではの進化といえるのかもしれない。

一概には言い切れないが、音楽にとってファッションはコミュニティ創成の一つのツール、ファッションにとって音楽はブランディングとコミュニティ共有の生存戦略として存在しているという面が時代を増すごとに強固になっているように思える。

参考記事一覧

http://modaddiction.info/?p=208
https://gqjapan.jp/fashion/news/20180122/hedi-slimane-joins-celine
https://qetic.jp/life-fashion/hedislimane-180124/276596/