世界と自分を新しく結びつける

夜中に暗闇で電気のスイッチを探したことは、誰にでもあるだろう。手探りで壁との距離を確かめ、指先で壁のでこぼこを伝う。その時私たちは、身体で空間を認識している。日常生活において、自分が世界のどこに存在しているのかという情報は、基本的に視覚によって受け取っているが、他の感覚を経由したとき、自分と世界は新しい結びつきを持つ。

そういう意味で、目の見えない人は、普段から視覚以外での受信によって自分と世界を結びつけている。触覚だけでなく、音の反響や風、温度、湿度などを身体全体で複合的に受け取り、人や物との距離を感じ取っているのだ。

自身も全盲であり、ダイアログ・イン・ザ・ダーク(※1)の案内人を務めている檜山さん。echoでは彼が普段どのように空間を認識しているのか、感覚を共有することからスタートした。

身体全体で空間を認識するとき、その知覚を拡張させることができるのは、身体に一番近い「衣服」かもしれない。そこにまだ世界のどこにもない服の全く新しい可能性が眠っていた。

※1 ダイアログ・イン・ザ・ダーク
みえない、が、見える!まっ暗闇のソーシャル・エンターテイメント。世界 41か国以上で開催され、⽇本では1999年より20万人以上が体験。参加者は完全に光を遮断した空間の中へグループを組んで⼊り、暗闇のエキスパートである視覚障害者のアテンドのもと中を探検し、⽬以外の感覚をフルに使ってコミュニケーションをとりながら、様々なシーンを体験する。

 最先端テクノロジーとハイテク素材の融合

服についたセンサーが周囲の物や壁との距離を測り、それが振動となって服から身体に伝わる。echo wearの機能を簡単に説明するとこうなるが、実際に服が身体器官として違和感なくシームレスに機能するためには、様々なテクノロジーが必要とされる。

echo wearの心臓部となる信号の発信・受信・振動の機能は、ライゾマティクスリサーチが電子回路からアプリケーションまで新規に開発した。

その機能を誰もが毎日着用できる着心地のよい服として実現しているのが、Xenoma社が提供する世界最先端のPrinted Circuit Fabric(PCF)技術を用いた「e-skin」だ。

伸縮性・耐久性・絶縁性、全てを備えた特殊な配線を用いて布上に回路を形成することで、衣服として不可欠な、洗濯を可能にした。

振動を受け取るために、身体と衣服の密着性も重要だ。振動が身体に心地よく伝わるために、様々な素材を試した。小さな閃光を走らせたのは、三井化学株式会社の「アブソートマー」という素材。素材自体が、体温によって熱変性し、服自体がその人の身体にフィットする仕組みとなっている。

そして、ANREALAGEデザイナーの森永氏が、機能を搭載しながら、デザイン性の高いソリッドなウエアをデザインした。こういったテクノロジーを纏う衣服であっても、見た目がスマートで美しいということは、本当に着たいものになるかどうかという観点で最も重大な要素だ。

人間の身体や知覚を更新する未来

echoプロジェクトは、これまでにも2017年10月のヨコハマパラトリエンナーレにてインスタレーションを展示した。

そこから更にウエアを進化させ、今回2018年7月5日から4日間、日本科学未来館・イノベーションホールにて、暗闇の中で空間を知覚する服の体験型展示を行う。ウエアを身につけることにより、振動での知覚から設計された空間を歩くという、今までに感じたことのない感覚を体験することが出来る。

視覚ではなく、触覚で空間認識をし、コミュニケーションをとったとき、私たちの世界はどう更新されていくだろうか。服を通して空間と身体をつなぎ,呼応することでどんなふうに像が立ち現れてくるだろうか。

新しい身体器官をもとに街や都市、空間についても実験を進めていく予定だ。この展示で、新しい知覚がどのように私たちの世界や生活を変えていくのか、実際にechoを体験を通して感じられるだろう。


【開催概要】
タイトル:「echo」
会場:日本科学未来館 7階イノベーションホール(東京都江東区青海2-3-6)
会期:2018年7月5日(木)~7月8日(日)
日時:7月5日(木)18:00~21:00、6日(金)16:00~21:00
7日(土)、8日(日)12:00~21:00
※体験は予約制となります。体験申込方法をご確認下さい。
※ご参加いただくにあたり、peatix、公式サイト画面上の注意事項をご確認のうえ、お申込みください。
参加費:無料
体験所要時間:30分(説明・準備時間20分/服を着用した体験時間10分)
体験申込方法:peatix:https://echowear.peatix.com/