体験したあとに“もどかしさ”が残る、空間を身体で“みる”感覚

「echo」は“振動で空間を認識する”新しい身体器官だ。誰しもが同じスタートラインに立ち、同じ感覚を共有することができる。目が見える人も、見えない人も、まったく初めて味わう「第六感」なのだ。

「私はいつも白杖を使って物体に触れて距離を判断し、空間を認識しています。しかし、『echo wear』を着たとき、物体に触れていない状態で空間を認識できました。生まれて初めて味わった感覚でしたね。そこがとても面白かったです。これまで衣服は寒さや暑さなどの刺激を防ぎ、世界と自分を遮断するものでしたが、『echo wear』は、世界を教えてくれるものでした」(檜山氏)

当日、筆者も実際に「echo」を体験した。少し大きめのサイズであったが、前述の「アブソートマー®」によって、装着後すぐにフィット感を覚える。テクノロジーを搭載した服でありながら、不思議なほどに着心地は良い。

アイマスクを装着し、体験ゾーンを歩く。視覚が遮断された世界にセンサーが反応し、振動が障害物の存在を教えてくれる。はじめは恐る恐る、振動で世界を確認しながら足を進めていった。だんだんとその感覚に慣れはじめ、恐怖が薄れてきた瞬間に体験終了となった。

「echo」を体験した人たちからは「もどかしさが残る」との声が多く寄せられているそうだ。人間が新しい感覚を装着するまでには、半年以上がかかると言われている。数分の体験だけでは身体が未知の感覚に追いつけず、違和感を感じてしまうという。

ファッション・都市・人間の関係から考える、新しい衣服の在り方

世界初となる「知覚を拡張する服」は、大きな可能性を秘めている。イベントの最後には、登壇者たちから今後の展望が語られた。

「『echo』は視覚障がいがある方だけでなく、聴覚障がいがある方にも役に立つと思います。福祉領域でのイノベーションにも、今回の研究が役に立つのではないでしょうか」(檜山氏)

「echo」は、まだまだ研究段階にある。今回の展示のような特別な機会がなければ、体験することができない。しかし、日常的に着られる「衣服」となったとき、人や街の在り方に大きな変化が起きるかもしれない。

「衣服として、量産していければいいと思っています。新しい感覚を獲得するためには、半年以上の年月が必要だと言われているんです。逆に言えば、『echo』が日常的に着られるようになったら、人類は新しい感覚を手に入れることができる。ファッションと都市と人間の関係を考えて、進化させていければと思います」(真鍋氏)

「7月20日には、NTTインターコミュニケーション・センター 『ICC』でキッズプログラムを開催します。こどもたちの意見も、今後の開発に活かしていければと思います」(田井氏)

ファッション界の第一線に立ち、服と向き合い続けてきた森永氏は、「echo」が実現する、新しい服の在り方に可能性を感じている。

「テクノロジーの発達で、衣服は進化してきました。しかしこれまでは衣服の中ーーつまり身体を軸に語られるものが多かったように感じます。身体の情報を読み取るウェアラブルや、暑さや寒さから身を守るものなどです。しかし『echo』は、外の世界を感じることができるツールでもあります。そうした新しい服の在り方を、日常に落とし込めたらいいですね」(森永氏)

テクノロジーの発展で、衣服は進化を続けている。しかしこれまでは、身に纏う個人の身体を快適にすることを目的に、衣服の在り方が更新されてきた。

「echo」が実現する社会実装型のファッションテックは、人、都市、空間の在り方を大きく変えていくだろう。会場に集まった人びとは、開発者が語る「未来」を想像し、期待に胸を膨らませた。

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