飲食店が、ブランディングに注力すべき理由

海外を訪れると、日本の外食レベルの高さに気づかされることが多いだろう。味、コストパフォーマンス共に世界トップクラスだと言っても過言ではない。

さらにその数も多い。特に都心部においては、数メートル間隔で様々な業種・業態の飲食店が立ち並ぶ。24時間営業の飲食店も当たり前に存在し、最低限のお金と時間があれば、いつでもどこでも空腹を満たすことができる。

そんな現代の日本において、「わざわざ行きたい」と思われる店になるためには、独自の存在価値を明確に示す必要がある。そのために、今飲食店が注力すべきことの1つが「ブランディング」だ。

本記事では、「FOODIT TOKYO 2018」で行われた3つのセッションから、ブランディングに関するトピックを抜き出し、「飲食店ブランディングの現在」を紐解いていく。

「究極のオリジナリティ」は、世界中を魅了する

「今は、オリジナリティのある飲食店が人気になる時代です」

こう話すのは、本田直之氏(レバレッジコンサルティング株式会社 代表取締役社長)。1年の半分以上を海外で過ごす同氏は、B級から三つ星レストランまで、世界中のグルメを食べ歩き、食通としても知られている。

本セッションでは、モデレーターに柳瀬博一氏(東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院教授)を迎え、「飽和化する外食産業。究極の『オリジナリティ』とは」をテーマに、国内外の飲食店の最旬トレンドが語られた。

「オリジナリティ」が飲食店の人気要因となる背景には、Instagramの存在があると本田氏は言う。

「個性的なビジュアルの料理や、斬新なパフォーマンスが楽しめる飲食店では、顧客がそれらを撮影して、Instagramにアップします。Instagramはビジュアル先行型のSNSですから、共通言語が不要。なので、それらの投稿が魅力的であれば、世界中の人の目に触れて『行ってみたい』と思わせることができるのです」(本田氏)

本セッションでは、オリジナリティがある故に、世界中から人が訪れる飲食店が多数紹介された。独創性の高いメニューや、驚きのパフォーマンス、強烈なキャラクターの店主など、どれも唯一無二の体験が堪能できる店ばかり。

これらの店に共通しているのは、訪れた人に「楽しさ」を提供していることだ。味覚は民族や文化によって異なるが、「楽しい」と感じる体験は世界共通である。そのお店に行かなければできない体験があれば、多少立地が悪くても、国境を越えてでも「行きたい」と思われるのだ。

しかし、奇をてらったメニューや演出だけに注力すればいいというわけではない。本田氏が紹介した店はどこも、美食家が認めるほどの「確かな味」を提供している。真摯に料理に向き合い、「本物の味」を提供しているからこそ、「楽しさ」がエッセンスになるのだろう。本格的なプロの味と、遊び心ある演出。この2つのギャップこそが、飲食店に求められるオリジナリティなのかもしれない。

「価値あるコミュニティ」が、次世代の担い手を惹きつける

飲食店にとって最も重要な要素は「人」である。キッチンスタッフやホールスタッフ、マネージャーに至るまで、彼らが優秀であればあるほどに、顧客に「質の高い飲食体験」を提供することができるからだ。働き方改革が叫ばれ、仕事観が変容するなかで、飲食店はどのような視点で採用を行なっていくべきなのか――。

「次世代の『仕事観』は飲食店の未来をどう変えるか」をテーマにしたセッションには、FOODIT TOKYO実行委員長である中村仁氏(株式会社トレタ 代表取締役)と、瀬川憲一氏(株式会社トレタ CRM事業本部長)、「WIRED CAFE」など、数々の飲食店を手がける楠本修二郎氏(カフェ・カンパニー代表取締役社長)が登壇した。

飲食店の未来を担うのは、1986年〜1996年に生まれた世代。「次世代」と呼ばれる彼らの仕事観には、ある傾向があるのだと中村氏は説く。

「ミレニアルズ世代の人たちは、規範や組織に依存せず、自分の頭で考えて意思決定を下す傾向があります。内なる欲求に素直なので、心の底から『やりたい』と思うことを仕事にしたいと思っているんですよね。たとえ高収入であっても『やりたい』と思えない仕事はしたくないという人が大半です」(中村氏)

そんな彼らがやる気を感じるのは、「コミュニティの中で何かを生み出す仕事」だと中村氏は言う。コミュニティとは、共通の目的を持った人の集合体。次世代の働き手が活躍できる場所となるためには、「食事」という目的の元に人が集う飲食店を、コミュニティとして捉えていく必要がある。


「コミュニティの創造」をテーマに、数々の飲食店を手がけてきたのが楠本氏だ。同氏が代表を務めるカフェ・カンパニー社では、スタッフに対して「コミュニティリーダー」としての能力を求めているそうだ。

中村氏によれば、次世代の若者にとって「どのコミュニティに所属しているか」が武器になると言う。飲食店の採用担当者は、そうした彼らの特性を理解し、「自分たちがどのようなコミュニティであるのか」「所属することによって、どんな価値を得られるのか」を明確に示す必要がある。それが、いいスタッフとの出会いにつながっていくのではないだろうか。

ブランド価値を高める、オリジナルユニフォームの可能性

オリジナリティあるお店であること、そして魅力的なコミュニティであることが、良い顧客・良いスタッフとの出会いの鍵となる。

それらを実現し、飲食店ブランディングをより強固にするのが、オリジナルユニフォームの存在だ。

「ユニフォームのちからで働く姿をブランド価値に」をテーマに行われたセッションでは、鍛冶村忠(シタテル株式会社セールス・マーケティング部)が登壇。シタテルがこれまでに手がけた飲食店のオリジナルユニフォームを紹介しながら、会場に集まった飲食業界関係者に向けて、ブランディングへの有益な影響を示唆した。

調理や給仕など、飲食店で働くスタッフは、常に身体を動かさなくてはいけない。そのため、ユニフォームに求められるのは「機能性」であり、業務用のカタログから選んだ既製品をユニフォームとする店が多い。

しかし、0から創るオリジナルユニフォームは、3つのブランディングに効果を発揮する。採用ブランディングインナーブランディング、そしてアウターブランディングだ。

日本酒酒蔵の「福光屋」は、ファッション性の高いワークシャツで、酒蔵の若手・女性人材の採用に貢献。また、生どら焼き専門店「DOU」は、ブランドコンセプトを投影したユニフォームで、スタッフの一体感を高めた。

「DOU」のワークウエア

「オリジナルユニフォームの生産は、既製品を購入するよりもコストがかかります。しかし、結果的に採用費や広告費の削減にもつながります。飲食店ブランディングの必要性が高まる今、オリジナルユニフォームは、新たな戦略の一つにもなるのではないでしょうか」(鍛冶村)

飲食店ブランディングの鍵は、「差別化」ではなく「個別化」

これからの飲食店ブランディングを思考する上で、「差別化」ではなく「個別化」が鍵となるだろう。メニューの目新しさや、コストパフォーマンスの高さで勝負する時代は、終わりつつある。これからの飲食店は「そこでしかできない体験」を提供する、唯一無二のコミュニティであるべきだ。

あらゆることが目まぐるしく変化していく今、人びとが心の底から「満たされたい」と願うのは、空腹ではなく、心なのだから。

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