2018年を代表する東京のレストラン

日本、フランス、デンマーク。国境をまたいで交わるルーツを「発酵」という手法と、唯一無二のセンスで一つにつなぐ。目黒通り沿いに位置するレストラン「kabi」は、新たな美味しさで、味覚の外縁を広げてくれるレストランだ。

食を探求する専門家から、文化の領域に造詣の深い玄人まで、様々な人々が注目する「Kabi」。

「20代のシェフとソムリエが拵えた斬新なお店」というキャッチーなインパクトだけに頼るのではなく、レストランという体験のあらゆる細部にこだわって、支持を集めている。

ペアリングの妙、複雑で繊細ながら強い旨味、視覚的な美しさ、様々な賞賛の声が寄せられていて、2018年を代表する東京のレストランだといえるだろう。

とある土曜日の夜。レストランは満席に。

今回フォーカスしたのは、そんな「kabi」の二階。この二階を舞台に、不定期にコミュニティイベントが開催されていることをご存知だろうか。

日本家屋を改築した建物の一階部分はモダンな印象だが、ソリッドなカウンターの奥に足を踏み入れると、そこには日本家屋のムードがそっくりそのまま残されていて、まるでサツキとメイの家のような階段がひっそりと佇んでいることに気づく。

ギシギシと上った先に待ち受けているのが、日本家屋の風情を強烈に残した二階スペース。あえてギャラリーなどと規定せず、様々な催しの受け皿として利用されている。この日開催されていたのは「Bar A-bi(e;bi)」というイベントだ。

野村空人:ロンドンでのバーテンダー経験の後、「Fuglen Tokyo (フグレン トウキョウ)」のバーマネージャーに就く。現在はドリンクコンサルタント「ABV+」として活動をしている。独立後はお酒文化を深め、広める活動を様々な手段で行なっている。

「新しい体験のハブになるような場所として、もともと親交のあった「Kabi」の二階で、時々バーをやらせてもらっているんです」

フリーランスのバーテンダーとして活動する野村空人氏はそう語りながら、手際よく次々とカクテルを作る。メニューに記載されているラインナップは、実に30種類以上。国内外のリキュールを用いた、独創的なカクテルが並ぶ。

食という豊穣な文化のルーツを尊重しながら、自由で斬新なクリエーションを探る

「キャッチーな打ち出し方をするわけではなく、コンセプトを掘り下げて、カクテルの本質的な魅力を伝えていきたいんですよね」

そう口火を切った彼は、「ADV+」という自身が主宰するプロジェクトについて説明してくれた。

「abvとは、お酒を象徴する(alchol by volume)言葉です。そこに何かを掛け合わせて、お酒という文化を深め、広めたいと考えて名づけました。今は個人でお酒にまつわるコンサルティングを行なっています。

様々な企業やブランドとコラボレーションしたり、こうやって、今までのバーの形態にとらわれない形で、お酒の魅力を考えて伝えていけたらなと」

その言葉を裏付けるように、独創的で、誰しもが興味を持つようなカクテルばかりが並んでいる。

「Fermented pineapple」と名づけられた一杯は、奄美大島のラムに、ハニークリーム、レモンジュースを合わさり、甘さと強烈なラムの個性がマッチしている。まるで一つのストーリーのように調和と起伏を併せ持つ味わいは、カクテルという文化の奥深さを体感させてくれる。

「ヒビヤ セントラル マーケットに出店するバーのためにメニュー開発をしたのですが、日比谷という場所の歴史に着目して、それをどのようにカクテルの中で再現するかを考えました。1900年代、日比谷公園や日比谷交差点が作られた頃、ジャックローズという有名なカクテルがニューヨークで生まれ、日本にも渡り広く飲まれるようになりました。

そうした時代背景を踏まえながら、現代におけるそれぞれの日比谷はどんな場所なのか?という問いに対する答えを、カクテルという形で導きたいと思っています」

歴史に敬意を表することは、「発酵」という歴史の中で研ぎ澄まされてきた調理手法に根ざす「Kabi」との共通項だ。食という豊穣な文化のルーツを尊重しながら、その上で自由で斬新なクリエーションを探る。これがこの場所に貫かれる哲学なのかもしれない。

気づけばたくさんの人々が足を運び、いくつもの柱が立つ空間は賑わいを見せていた。

特徴的なのは、様々なバックボーンの人々が集まっていることだろう。誰もが知っているIT企業の社員から、音楽家、アーティストまで、様々な人が一つの空間でカクテルを楽しんでいる。

「コラボレーションを大事にしている」と語る野村氏の言葉がそのまま具現化したかのような、豊かな生態系のコミュニティがそこに生まれようとしていた。

野村氏はもちろん、「Kabi」のシェフとソムリエが高く評価されるのは、今までにないやり方で、大人の美食家や感度の高い人達をうならすような新しいアプローチをしている点にある。レストランやバーと言う固定概念を越えて、食の文化を切り拓く姿勢への共感が、様々な人を魅了しているのだろう。

Bar A-bi(e;bi)」は月に一度程度の頻度で不定期開催中。ぜひこちらからチェックして、足を運んでみてはいかがだろう。

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