自由に自分の好きなことがしたい。二足のわらじで始めたセレクトショップ

ニューヨークの企業でクリエイティブディレクターをしながら、パラレルキャリアでオンラインセレクトショップ 「KANORADO SHOP」を営む冨田さん。インテリアデザイナーの奥さんと、自分たちの欲しいものだけを集めたり、 オリジナルプロダクトをつくったりして、インターネットで販売している。

「会社に勤めていると、どうしてもデザインや時間の制約が出てきて。ゆっくり、自分たちが納得できるものを作れたらなと」。服づくりは初めてだったが、知り合い伝いにニューヨークの工場を紹介してもらい、シャツを作った。

サンプル制作ほどの高コストで20着ほど作ってみたが、結局生地が余ってしまい、なかなか次の展開ができなかった。

手の良い工場は数あれど、自分のイメージを誠実に形にしてくれるところを探すのは難しい

小ロットで、かつ自分のイメージしたものをきちんと作ってくれるところはないか、冨田さんは新しいアイテムを作りたい想いを温めていた。

「ニューヨークは工場だらけで、有名ブランドを手がけているところも多いんですけど、知り合いのツテでどうにか見つけて入っていくしかないんです。自分に合った工場にたどり着くのは正直難しいですね」。

そんなある日、ネット上で気になる動画を見つけた。「youtubeに上がっていたドキュメンタリー番組で偶然シタテルを知って。それで、新しいアイテムが作れるかもと。シタテルであれば生地の余りも出ないので」。

それまでの商品はMade in NYだったが、日本での生産にも興味を持っていた。冨田さんにとって重要な事は、自分のイメージを形にしてもらえるかどうかということだったのだ。日本の方がクオリティも安定しているだろう、まずは相談してみようと問い合わせた。

ニューヨークと日本。チャットだけのやりとりでも、出来上がったプロダクトがすべてだった

シャツは作ったので、今度はボトムスを作ろうと決めた。アイテムは「サルエルパンツ」。最初は試しにやってみようくらいの気持ちだった。ファッションデザインは専門ではないため、自分たちが着たい洋服のイメージを伝え、雰囲気などはマイアトリエの画像等で共有して要望を送った。

「かなり漠然としたことしか言ってないんですけど、お願いしたことがそのまま形になって上がってきて、信頼できるなと思った」。

サルエルパンツは、股下の余らせ方がポイントだ。履いたときに生地が余り過ぎてよれたり、階段が上がりにくいといったような不便をなくしたいと思い、コンシェルジュと入念に打ち合わせた。日本とニューヨークで14時間の時差はあったが、チャットで無理なく話を進められた。

「インターネットでやり取りしやすいので、ニューヨークと日本との距離は気になりませんでした。郵便も思ったよりもとても早く、月曜日に送っていただければ水曜日か木曜日には届けてくれます。」

テクノロジーが連れてくる、ものづくりの未来

「できる人にできることをお願いして、極力人にお願いしてものづくりをしてますね。いつもこんなものを作りたいというのがあって、知り合いに協力してもらって形にしていっています」

冨田さんのスタンスは一貫している。常に「こういうことがしたい、こんなものが作りたい」という目的があって、自分にできないことは周囲に得意な人がいたら力を借りたり、自分でも色々考える前にまずは実行してみる。

元々、 渡米したきっかけもそうだった。アメリカに縁があったわけではなく、心理学を学ぶにはどこがいいかな、という思いで渡米を決意。英語が得意だったわけでも、英語を学びに行ったわけでもなく、英語力は必要に迫られて後から付いてきたと、何でもないように語る。

アイテムは、できるだけオールシーズン着れる定番ものにしている。平日の夜と土日だけでやっていることもあり、生産期限などあまり決め込まない。あくまで自分たちの納得できるものが作れることが大事。

「工場も、閑散期の空いている時間にゆっくり作ってもらえればいいかなって」ニューヨークでは、企業に属しながらも、自分で2つ3つ好きな仕事をしている人が多いそうだ。

「副業的にみんないろんなことをやっているんです。周りでは洋服のブランドをやっている人やフローリストをやっている人など様々です。1つメインでやってるんですけど、自分で好きなことをやっていたり、得意分野で手伝っていたり。僕も頼まれれば、できる範囲で協力するようにしています。自分のできることを表現する場としてセレクトショップをオープンしているとも言えますね」。

自分のできること。誰かのできること。インターネットを介せば国境も人種も関係なく、それぞれの”好き”や”得意”を活かしてものづくりができるし、誰かの作品を簡単に買うこともできる。それは、人とテクノロジーが連れてくる、ものづくりの新しい未来のひとつなのかもしれない。