テクノロジーが発達しファッション業界にその技術が導入される中、日本のアパレルマーケットには様々な問題があることが明らかになってきている。衣服の買い方・売り方が多様化し、消費者が求めるものも個人によって様々だ。そんな時代の中で、ファッション業界が未来を切り開いていくためにはどうしていけばよいのか、また日本はグローバル市場においてどんな活躍をしていけるのか。

シタテルの戦略アドバイザーとして活躍する、経営戦略コンサルティング会社ローランド・ベルガーの福田稔氏に話を聞いた。

国内で個性あるブランドを

「国内のアパレル市場はラグジュアリーとマスの二極化が進んでいる」と福田氏は語る。日本はこれまで中間所得層のボリュームが大きく、ファッションは嗜好品ではなくトレンドビジネスとして進化してきた。しかしながら、消費者が変わる中で多くのアパレル企業が変化についていけず苦しんでいる。

「ボリュームゾーンに合わせてブランドの同質化が進んだ結果、個性がなくアイデンティティに欠けるブランドが多い」というのが福田氏の意見だ。中間価格帯のブランドがガラパゴス化している中、もっと個性のあるブランド、例えばメイドインジャパンをうまく活用しているブランドが出てこなければならない。

しかしながら、現実的にはアパレル産業の構造上、川上と川下の連携が弱くせっかくの質高い国内生産背景をブランド側が活用できていなかったり、消費者の手に届くまで間に入る会社が多くなりコストが高くなってしまう等の問題が目立つ。

購買のきっかけをつくる付加価値が必要

スマートフォンが日常生活に浸透し、ネットとリアルがボーダーレス化する中、「ネット・リアル問わず、いかにユーザー体験を高めるかが今後の鍵を握っている」と福田氏は主張する。リアルという点では、241の国内外の有力ブランドが出店しているGINZA SIXや駅一体型の名古屋高島屋に見られるように、個々の立地を最大限に生かしたユーザー体験の創出が必要だ。

一方、成長市場であるネットは試着ができないというボトルネックがあるが、音声・対話AIの登場やVR・ARによって、スタイリングについてのアドバイスを受けたり衣服を着た様子を仮想で表現することが可能になってきている。

今後テクノロジーの進化に伴いネットのユーザー体験は革新を続け、新しい買い方が広がっていく。買うだけではなく、レンタルやシェアリングなど様々なサービスが広がり、ユーザーは自分にあった様々な服を様々な形で自由に選び取ることができる。

「もちろん、ショップで働く方は今まで以上に”この人から服を買いたい”というユーザー体験を生み出す工夫を実践していかなければならない」とリアルな場での対策も重要だと語っている。ただ服を売るのではなく、付加価値を生み出すようなサービスが求められている。では私たちは変化していく購買行動に対して何を整えていかなければならないのだろうか。

シームレスなサプライチェーンの整備

福田氏はアパレルサプライチェーンの問題点を大きく三つ挙げる。日本ではいい技術を持っている工場があるにも関わらず、工場や会社が全国に散らばっていること。サプライチェーンを繋ぐ商社が海外への展開を重視しているために国内は手薄になってしまていること。技術活用が求められているが、そもそもその技術について知る機会がないということだ。

インディックスが展開するファッションブランドZARAは生産背景と製品管理が非常にうまく、ユーザーが求めているものをいち早く届けることができるモデルが整っている。全てが垂直統合することは難しいが、川上と川下がシームレスに繋がる事ができる環境づくりを行なっていくことが改善につながる。また地方の人口減少の問題も加味して、サプライチェーンを考えることも必要だ。アパレル以外の産業が行なっていることを参考に、どうそれを活用できるか考えていかなければならない。

グローバル規模で「服づくり4.0」へのアップデート

2017年春先、経済産業省は株式会社ローランド・ベルガーへの委託のもと、デザイナーズブランドjunhashimotoとsitateruは「服づくり4.0」というITプラットフォームの活用による新作コレクション制作を行なった。

福田氏はsitateruを日本のアパレルマーケットの課題をダイレクトに解決するソリューションであると捉え、「アイテムごとに全く新しい工場や生地で作り、実際にいいアイテムを製作することに成功している。工場同士のシナジーも実現され、それぞれのクリエイティビティも向上する。」と話す。

しかし、業界にはまだまだ解決すべき課題がある。「まずは日本でのスケール化を目指し、更には海外のブランドが日本の生産背景を利用できる基盤としてのサービス展開ができるのではないか。産地や工場のブランド力を高めプロデュースしていけるようなプラットフォームになることも目指すべきだ。そうすることで、国内だけでなくグローバルにおける日本のアパレルの地位を向上させていくことができるだろう。」