着なくなった洋服を回収し、再び流通させるという新サービス

月額制ファッションレンタルサービスを展開するエアークローゼットが2018年12月に「シェアクローゼット(shareCloset)」という新プロジェクトを開始した。消費者が着なくなった洋服を店頭で回収し、同社が持つ検品技術やメンテナンスノウハウを生かして、レンタルサービスやリサイクルによって新たに着てもらえる環境を作るというもの。まずはフランドルと協業し、捨てられるはずだった洋服にふたたび息を吹き込む、まさにサステナブルな取り組みだ。背景として、天沼聰エアークローゼット社長は「廃棄の出口を狭めたい」と強調する。

「購入したにもかかわらず、クローゼットの中で新品同様のまま使われない洋服があるという話をお客様から聞きます。洋服には基本的に『作る、買う、着る』の3工程しかありません。これまで、『エアークローゼット』のレンタルというこれまでにない選択肢によって洋服との“新しい出会い”の機会をつくってきましたが、『シェアクローゼット』によって着られない洋服、捨てられる洋服を減らせるのではないかと考えました」(天沼聰エアークローゼット社長)

アパレル企業側でも捨てられる洋服を減らしたいという思いは強まっているというが、洋服を回収するとなれば、一度販売した洋服の扱い方には慣れていないことが多い。だからこそ、レンタルサービスによる商品サイクルの知見を持つエアークローゼットが仕組みを作り、業界全体へと啓蒙することを考えた。

「仕組みを提供することでたくさんの企業に賛同いただけた方がインパクトは大きくなるはず。廃棄を減らす活動は別に一社でやる必要もないし、われわれとしても今回は企業をアピールしたいわけではなかったんです。だからこそ、企業のサービスとは別の形でプロジェクトを立ち上げました」(天沼社長)

レンタルサービスの何がサステナブルなのか?

ここ数年で急速に普及した洋服のシェアリングサービスだが、洋服を買って終わるのではなく、いろんな人にレンタルすることでたくさん着てもらうという観点からも、サステナブルなサービスだという印象は強い。そもそもエアークローゼットには創業時からサステナブルという視点があったのだろうか。

「もともとサステナブルなビジネスをしようと思ったわけではないですね。エアークローゼットの最初のコンセプトは『ライフスタイルの中でわくわくする体験を生み出そう』というもの。ライフステージが変化してゆく女性が限られた時間の中で、これまで出合えなかった洋服と出合える体験を作りたかったんです。新しい出合いによって、出合わずに着られなかった洋服を減らしていくということが、結果的にサステナブルにつながりました」(天沼社長)


天沼社長が話すように、レンタルサービスの最大の目的は「洋服を買わなくて済む」ことではなく「着用機会を増やし、新しい洋服に出合う」こと。むしろ、購買にもつながる、消費の新たな選択肢だ。事実、同社サービスの利用者のうち8割がこれまで着たことのなかった新しいブランドと出合い、そのうち半数はブランドの店舗やECサイトを訪れている。最初はシェアリングに対して懐疑的だったアパレル業界もこうしたポジティブな結果を受けて、次第に時局が変わりはじめたというのが現状だ。

また、レンタルサービスには「新しい出合い」のほかに「着用後のデータが得られる」というメリットもある。店頭では販売して終わりだった洋服から「実際に着用してどうだったのか」「そもそも着用されたのか」というデータを回収できるのだ。こうした顧客データをもとに、本当に消費者が着たいお洋服をINEDと共同開発するなどの新たな取り組みも動きはじめている。「着られたかどうか」を可視化することで川上にある「作る」行程を変えていこうという動きだ。

エアークローゼットとしても、着用に関するデータがあるからこそ、在庫の回転率はしだいによくなっており、同社が持つ在庫のうち「着られない洋服」の割合は減り続けているそうだ。今ある在庫を本当に着たい人に着てもらい、そのデータを生産工程へとフィードバックする。これはまさにレンタルサービスが生み出したサステナブルな流通への一歩と言えるだろう。

サステナブルかどうかは時代とともに変わっていく

天沼社長は取材時に何度も「洋服目線」という言葉を口にした。サステナブルの話では、どうしても効率化や仕組み作りにばかり注目が集まるが、この「洋服目線」を持つことは非常に重要なことだと感じた。

「アパレル業界では同じ型の洋服は同じものとして扱うのが通例です。しかし、airClosetでは、同じ型でも一着ずつナンバリングをします。レンタルサービスをやっていると、同じ型の洋服でもそれぞれが全く異なる扱われ方、着方をされるんですよね。すべてを別々に個体として見たときに、洋服も一つひとつ違うんだということがわかって、すごくしっくりきたんです。ものを大切にするというか、こういう気持ちが社会全体を動かすのかもしれないなと」(天沼社長)

そもそも、サステナブルかどうかは「時代とともに変わっていくものだ」と天沼社長。リサイクルという概念がなかった時代には作ったものは全て消費されて廃棄されるしかなかったが、もしも全ての洋服がリサイクル可能になれば、廃棄という選択肢はなくなり、効率よく全ての商品が購入されること自体が必ずしもサステナブルではなくなるかもしれない。テクノロジーの進化とともに、サステナビリティは変わっていくのだ。

「無駄を省くことと、もったいないという感覚を持つこと。変わらないのは、この2つに尽きると思います。そんな中で、われわれとしては、廃棄以外の選択肢など、新しい道を作ることを徹底的に続けてゆきます。日本には昔からものを大切にする『もったいない』文化が根付いているからこそ、サステナビリティは受け入れられやすい。実際にお客さまから『次にレンタルする方のためにも綺麗に使っています』という声を聞いてすごく嬉しかったのですが、こうした日本らしい思いが根本にあってこそ、サステナブルな社会が実現できるのではないでしょうか。」(天沼社長)