資生堂グローバルイノベーションセンター(呼称:S/PARK)

研究所を街に開かれたオープンな場に

「とにかく、オープンな場所にしていきたいということが第一でした。お客さまやスタートアップ企業などが、自由に出入りできて、美に関する気づきを創発していく。そんな場です」

資生堂 S/PARK企画グループ マネージャーの蔵内健太郎氏はこう話す。もともと横浜市の閑静な住宅地エリアにあった研究所の移転プロジェクトは数年前から始動しており、移転場所の候補は地方も含め様々な場所が検討された。結果、みなとみらいエリアに「都市型オープンラボ」として街に開けた研究所にしていく方針となった。

資生堂 S/PARK企画グループ マネージャー蔵内健太郎氏

「これまでは研究員が、お客様と直接コミュニケーションする機会は少なかった。また、研究員同士の出会いも少なかった。そこで新しい研究所には、お客さまと研究員が出会い、お互いがインスピレーションを得られる場所を作ろうということになり、研究員にもその場作りに参画してもらいました」(蔵内氏)

研究員が自らつくるこれから先の資生堂

プロジェクトメンバーと研究員で喧々諤々な議論を重ねながら、トータルコンセプターとして小山薫堂氏(ORANGE AND PARTNERS)、空間デザイナーとして佐藤オオキ氏(nendo)の協力を得て、刺激的な研究所のオープンスペースが出来上がった。

S/PARKのユニフォーム

パーソナルスキンケア商品がつくれる「S/PARK Beauty Bar」、テラス席もある明るいオープンスペースで健康的な食事を楽しめる「S/PARK Cafe」、ランニングステーションの機能と、ヨガなどのエクササイズプログラムを体験できる「S/PARK Studio」、美について考える体験型ミュージアムの「S/PARK Museum」など、様々な角度から「美」を体験、体感できるコンテンツを配置。

このような特色のあるコンテンツをS/PARKとして一つに見せていくために、ユニフォームに何らかの一貫性を持たせることにこだわった。

S/PARKオリジナルフォントがプリントされたエプロン

その役目を担ったのが、S/PARKオリジナルフォントだ。デンマークのデザインオフィス「Kontrapunkt(コントラプンクト)」と共同で制作したこのオリジナルフォントを、S/PARK館内全体のサインや印刷物、ウェブなど随所に使用。ユニフォームにも印象的に使うことで統一感、そしてかっこよさ、先進性などを演出した。具体的には、例えばエプロンの前面や白衣の背面に、各コンテンツのロゴがかなり大きくプリントしているところがポイントだ。

S/PARKオリジナルフォント

「今回のユニフォーム制作で一番こだわったのは、S/PARKらしさを表現したオリジナルフォントを軸としながら、エッジが立っていて、お客さま、特に若い方からも、社員からもかっこいいと思ってもらえるデザインを目指しました。そしてそのイメージが新しい資生堂のイメージにもつながっていって欲しいという想いもあったのです」(蔵内氏)

S/PARK Studioスタッフのユニフォーム

S/PARK Studioスタッフのユニフォームは、動きやすいジャージ素材のパーカー。エメラルドグリーンを差し色にして、スポーティーさを出した。

新しいアイデアや気づきが生まれる場づくり

S/PARKのユニフォームディテール

インスピレーションが生まれる場作りとして大事にした点を聞くと、蔵内氏はこう話した。

「お客さまとの目線を合わせることです。接客やユニフォームもそうですよね。上から目線だったり堅い雰囲気ではなく、社員もお客さまも同じ空間を同じ気分で過ごすことができるフラットな場が重要だと考えていました。そのために、場の雰囲気は重要で、洗練されたデザインやフローリング、そしてインスタ映えするユニフォームなどで、居心地の良さとちょっとワクワクする気分を楽しめる場作りができたと思っています。(蔵内氏)

インスピレーションが生まれる場作りとして大事にした点について語る蔵内氏

取材に伺った平日も、横浜で働く人や近所のママが子連れでランチに来ていたり、研究員が打ち合わせをしていたり、その隣では海外の取引先企業が団体で視察に来ていたり、女性がスキンケアのカウンセリングを受けていたり、多種多様な目的の人々が、何ら違和感なく同じ空間にいた。

「洗練された空間でありながらカオスをつくりだす」ということは、たやすいことではないが、そういった場だからこそ、新しいアイデアや気付きが生まれるのだろう。

S/PARK

秘密のベールに包まれていた研究所を、大胆にオープンでフラットな場にしたS/PARK。ここから多様な美の価値観やプロダクトが生まれていくのが楽しみだ。