スターフライヤー機内

様々な顧客接点で「スマートラグジュアリー」な体験を

北九州空港に本拠地を持ち、福岡と東京や名古屋などを結ぶ、スターフライヤー。機体から内装、ユニフォームまで黒を貴重としたホテルのラウンジを思わせる印象で、全席革張りのシートは他社と比べてピッチが広く、ゆったりとくつろげるため、出張の多いサラリーマンを中心に多くのファンを持つ。その実績として、国内最大級の顧客満足度調査「2018年度版JCSI(日本版顧客満足度指数)調査」のうち、国内線を運航する航空会社9社を対象とした国内航空部門で第1回調査から10年連続で1位を獲得している。

そんなスターフライヤーが、近年掲げたブランディングのコンセプトは「スマートラグジュアリー」。この考え方のもと、周波数マスキングという手法を使い、機内の飛行音を軽減するアンビエント音楽(星の鼓動をテーマに作曲)を聞くことができるチャンネルを提供(現在は終了)するなど、いくつかの体験施策を実施してきたが、今回挑んだのは、オリジナルスーツづくりだった。

+FLOWと名付けられたスターフライヤーオリジナルスーツ

+FLOW」と名付けられた今回のスーツを通して目指したのは、ビジネスパーソンの“出張バテと戦う”こと。これまで10年にわたって機内での快適性を追求してきたスターフライヤーだが、高いパフォーマンスが求められるビジネスパーソンの出張において、長時間気圧などの外的要因による疲れを少しでも軽減できないかと苦心してきた。飛行機移動を含む“その日1日”を快適に過ごしてもらえる方法はないかと考えた結果たどり着いたのが、今回のスーツだった。

「快適さを追求する中でも、機内の設備的なところにはどうしても限界がありますし、他社さん含めていろんな工夫をされてます。そこで、飛行機に乗っている時間以外も含めて快適に過ごしていただく方法はないかという視点に切り替えてみたんです」(スターフライヤー 営業本部 マーケティング部 営業推進課 岡田治子氏)

スターフライヤー営業本部 マーケティング部 営業推進課 岡田治子氏

出張バテと戦うノウハウとテクノロジーを集結

機能性を追求したスーツはすでにスーツ大手を含めて各社が挑戦している部分でもある。スターフライヤーがやるからには、これまで同社が追求してきた快適性を実現するためのノウハウやデザイン性を最大限に生かす必要があった。そこで、医学博士監修のもとで、仮説に基づき快適性を検証することになった。

「機内では長時間同じ姿勢でいるため、血流が悪くなるのではないかという仮説が見えてきました。それは飛行機の中だけではなく、新幹線や会議など、ビジネスマンが避けられない課題。そこに対してできることはないのかということから作ったのが今回のスーツです」(博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 クリエイティブ・ファシリテーター 滝口勇也 氏)

博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 クリエイティブ・ファシリテーター 滝口勇也氏

この課題を解決するため、磁気や電気に頼らず、素材から自然発生する遠赤外線で体を芯から温めるメディカーボン(植物性炭素繊維素材)という素材を提案。スーツの着脱可能な状態で背裏、背面肩などに取り入れた。同じ素材でアイマスクも製作し、スーツとセットで販売することになった。ストレッチ性のある素材と立体的な切り替えで伸縮性を担保したり、シワになりにくいjunhashimotoの“SOFT MATTE TECH”という素材を使ったりと、機能性は十分だ。

「出張では、移動はもちろんのこと、落ち着ける環境・リラックスできる時間が少ないために、気づかないうちに体力を消耗しています。スーツ開発においては、こうした“見えない疲れ”をいかに軽減できるかがポイントでした」(医学博士 白濱龍太郎氏)

当然だが、junhashimotoによるデザインも秀逸だ。“クラシコ × ハイテク”をテーマに、機能性を担保しつつ、トラッドスーツに用いられる伝統的な仕様を施した。ディテールにも、手縫いの風合いを再現できる伝統的なステッチワーク(AMFステッチ)や飛行機の機体と同じ素材を用いた高価なジュラルミンボタンなどを採用している。

junhashimotoによるスターフライヤーのオリジナルスーツのディテール

「今回のコラボレーションで一番表現したかったのは“ミックス感”。“スーツ”と言う伝統的なアイテムと”メディカーボン“と言う革新的な素材を融合させるため、新しい化繊素材を昔ながらの製法で仕上げるデザインになりました」(junhashimotoデザイナー 橋本淳氏)

ブランド接点を拡げる衣服の可能性

今回の取り組みを経てスターフライヤーが感じた成果の一つが顧客接点の拡大だったという。飛行機に乗ることでしか顧客と出合えなかったスターフライヤーが、スーツという接点によって飛行機以外の場所でもブランドらしさを伝えることができたという。

「飛行機に乗る回数よりもスーツを着ている回数の方が多いはず。だから、乗る前からスターフライヤーになんとなく愛着があるという状態が作れていれば、飛行機搭乗の機会があったときには選んでいただけるかもしれない。愛着の醸成が、通常のコミュニケーション範囲の手前からできるようになりました」(スターフライヤー岡田治子氏)

「sitateruさんとの協業によって、機能性だけでなくきちんとスタイルを洋服に落とし込むことができたわけですが、衣服同様にブランドや企業も機能とスタイルの両面から成り立っているんだとあらためて実感しました。今回製作した衣服を通じて、お客さんや従業員からのフィードバックがあったり、コミュニケーションが生まれ、ブランドの解像度が高くなっていく。そこに衣服の可能性を感じました」(博報堂 滝口勇也氏)

<詳細・購入はこちらから>
https://www.starflyer.jp/campaign/2019/plusflow/

(コメント引用元:2019年6月13日 宣伝会議 ブランドコミュニケーションセミナー https://www.sendenkaigi.com/event/sitateru1906/