ベーシックアイテムはつくらない。売れることよりも、個性を大事にしたかった

「とにかく昔から、『人と一緒』が絶対に嫌なんですよね。だからどこかで見たような服は、絶対に作りたくない」

揺るがない信念を貫き通す姿勢ーー荻原桃子さんが多くの女性から支持される理由は、ビジュアルの美しさだけではなく、その強さにあるのだろう。

荻原さんは10代の頃から読者モデルとして活躍し、20代で自身のブランド「MURUA」を立ち上げ、プロデューサー・クリエイティブディレクターとしてファッション業界の第一線を歩んできた。そして30代を迎えた彼女は、新たなブランドを立ち上げた。2016年に誕生した「UN3D.」だ。

「UN STANDARD」「UN SIMPLE」「UN SIMILAR」という3つのアンチテーゼを語源に持つブランド名には、「時代、流行、常識、固定概念に1つ1つ疑問を持ち、自由な個性や感性を大切にしたい」という、荻原さんの思いが込められている。

「“濃い”ファンがつくブランドをつくりたかったんです。だから売れることよりも、ブランドの世界観をぶらさないことを第一に考えていて。そのために、これまでのファッション業界で”当たり前”とされてきたことをやらないようにしています。
たとえば、ベーシックアイテムの排除。セット売りにも繋がりやすく、万人ウケするベーシックアイテムは、多くのブランドが商品構成に組み込んでいます。しかし、UN3D.では一切つくっていません。シンプルなTシャツにも背裏の部分にブランドカラーの青いテープをつけて、どのアイテムにも一目で『UN3D.の服だ』とわかるようなデザインポイントを入れているんです」

ベーシックから距離を置き、個性を尊重するーー。服づくりに対する基本的な考え方は、MURUA時代から変わっていないと荻原さんは言う。しかし、UN3D.の価格帯は、MURUAの4〜5倍。その分、こだわりの服づくりを実現しているそうだ。

「他のブランドで既につくっているような服は、絶対につくりたくないんです。これまでにない、唯一無二の服をつくりたい。そのためには、工場と密接な関係を築くことが非常に重要です。仲良くなればなるほど、色々な要望に応えてくれるので。だから、新しい商品を開発する際には必ず工場に足を運び、担当者の方とお話ししているんですよ」

服づくりの現場である、工場との対話の中で生まれたのが、「オリガミプリーツ」だ。機械で規則的に折られた一般的なプリーツとは違い、職人の手によって複雑に折られたハンドプリーツ。荻原さんはその繊細なディティールに一目惚れし、ブランドのアイコンに採用した。UN3D.では毎シーズン、必ずオリガミプリーツを採用したアイテムが登場し、ショッパーやコートの背裏にも施されている。まさに「ブランドの顔」となるディティールなのだ。

「オリガミプリーツと出会ったのは、国内トップシェアを誇るプリーツ工場です。そこで所長さんに『プリーツが好きなので、これを採用したい』と話したら、すごく喜んでくださって…。それまでも、ハンドプリーツを採用するブランドはあったそうですが、そのほとんどがミセス向けだったとか。だから『まったく違う系統のブランドで取り入れてくれるのが嬉しいから、ぜひ協力したい』と言ってくださいました。服のつくり手と直接対話をすることで、新しい商品開発がスピーディーにできていますね」

細部までこだわり抜いたディティールに加え、UN3D.の個性となっているのがテキスタイル。「アート好き」だという荻原さんは、毎シーズンアーティストとコラボし、独特のテキスタイルを使ったアイテムを制作している。

「ファーストシーズンは、私が好きなイラストレーターの佐々木香菜子さんとのコラボレーションウェアをつくったんです。それから毎シーズン、アーティストコラボのアイテムを発表しているんですよね。実は最近、野性爆弾のくっきーさんともコラボしたんですよ。彼はお笑い芸人でありながら、アーティストとしても活躍していらっしゃる。だから、コラボしたら面白いんじゃないかと思って…。オリガミプリーツの中にくっきーさんの描いたイラストをあしらってみたり、プリントTシャツをつくったりと、遊び心あるコラボになりました。それまでは、綺麗めなアートやストリートアートとの企画が多かったのですが、少し違ったテイストを責めてみるのも、面白いと思ったんです」